太陽と月
3ページ/4ページ





なんとも言えない自己紹介の後、ピチューはようやく納得してくれたのかあの憐れんだ目を止めてくれた。

そして忘れかけていたけれど、そうだ本題だと切り出す。



「あのさ、ピチューも一緒に旅しない?」

『…は?』

「今ね、アブソルだけなんだけど…いっぱいで旅した方が楽しいかなって、」

『………嫌だ』



遮られた言葉に返ってきた答え。それは重々しく、断絶的で。シン、と静まり返ったところに追い討ちをかけるような言葉がまた、飛ぶ。



『…俺も、お前についていくなんて確定したわけじゃねぇ』

「…え?」

『いつでも、お前を捨てることはできる…今でもな』

「…ついてくるんじゃなかったっけ」



まるで便乗するように吐かれたその言葉。トレーナーを捨てるなんて、あり得るのか。でも、トレーナーにポケモンを選ぶ権利があるのなら、その逆もあるのだろう。

ピリリッと張り詰める緊張感に、自然と目が鋭くなるのがわかった。



『誰もお前をトレーナーと認めたわけじゃねぇ。 俺はお前といると下手に狙われなくて済むから、それだけだ』

「いやもしアブソルがいなくなったらうちのてもちいないじゃん」

『適当に捕まえりゃいいだろそこら辺で』



だから俺には関係ないと言わんばかりの口調に、流石にもやりと心が曇る。でも頭ごなしに怒っちゃダメだとそれを押し込んだのに、なのにだ。

俺じゃなくてもいいだろ、とその一言に押し込んだそれが発火した。

投げやりな言葉が、嫌になる。



「なんでそうなるのさ! ここまで来たのにさぁ!」

『はぁ?ふざけんなよまだ二日しかたってねぇだろ!』



二日、たったの二日。それはそうだけど。でもうちにとっては大きな二日で、アブソルが初めてのポケモンで。なのに、何で捨てられるとか旅をしないとか、いっぱいいっぱい、そんな嫌な話ばかりになるんだろう。

もやもやの感情が爆発して、また込み上げて、勢いよく喉を通る。



「天色さんには何も文句言わなかったくせに!」

『あの馬鹿力に反抗するとめんどくせぇんだよ!』

『…おい、』

「なにさそれ!」

『とにかく俺はお前のこと認めてねぇから!』

『おいって』

「っふざけ、」

『聞けお前ら!』



このままヒートアップするだろうと心の中の冷めたうちがそう思ってきた時、スパーンッといつの間にか割り込んできたピチューの尻尾が綺麗にアブソルの顔に命中した。一瞬グキッとか変な音が聞こえたけど大丈夫だろうか。

そして、その光景があんまりにも一瞬すぎて、怒りも吹っ飛んでしまった。するとペシン、と軽くうちの足も叩かれたよ、あれ案外優しい。

ギラリ、光った目を見せたピチューが何だか大きく見えた。

* #



back
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -