太陽と月
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なんとも言えない自己紹介の後、ピチューはようやく納得してくれたのかあの憐れんだ目を止めてくれた。
そして忘れかけていたけれど、そうだ本題だと切り出す。
「あのさ、ピチューも一緒に旅しない?」
『…は?』
「今ね、アブソルだけなんだけど…いっぱいで旅した方が楽しいかなって、」
『………嫌だ』
遮られた言葉に返ってきた答え。それは重々しく、断絶的で。シン、と静まり返ったところに追い討ちをかけるような言葉がまた、飛ぶ。
『…俺も、お前についていくなんて確定したわけじゃねぇ』
「…え?」
『いつでも、お前を捨てることはできる…今でもな』
「…ついてくるんじゃなかったっけ」
まるで便乗するように吐かれたその言葉。トレーナーを捨てるなんて、あり得るのか。でも、トレーナーにポケモンを選ぶ権利があるのなら、その逆もあるのだろう。
ピリリッと張り詰める緊張感に、自然と目が鋭くなるのがわかった。
『誰もお前をトレーナーと認めたわけじゃねぇ。 俺はお前といると下手に狙われなくて済むから、それだけだ』
「いやもしアブソルがいなくなったらうちのてもちいないじゃん」
『適当に捕まえりゃいいだろそこら辺で』
だから俺には関係ないと言わんばかりの口調に、流石にもやりと心が曇る。でも頭ごなしに怒っちゃダメだとそれを押し込んだのに、なのにだ。
俺じゃなくてもいいだろ、とその一言に押し込んだそれが発火した。
投げやりな言葉が、嫌になる。
「なんでそうなるのさ! ここまで来たのにさぁ!」
『はぁ?ふざけんなよまだ二日しかたってねぇだろ!』
二日、たったの二日。それはそうだけど。でもうちにとっては大きな二日で、アブソルが初めてのポケモンで。なのに、何で捨てられるとか旅をしないとか、いっぱいいっぱい、そんな嫌な話ばかりになるんだろう。
もやもやの感情が爆発して、また込み上げて、勢いよく喉を通る。
「天色さんには何も文句言わなかったくせに!」
『あの馬鹿力に反抗するとめんどくせぇんだよ!』
『…おい、』
「なにさそれ!」
『とにかく俺はお前のこと認めてねぇから!』
『おいって』
「っふざけ、」
『聞けお前ら!』
このままヒートアップするだろうと心の中の冷めたうちがそう思ってきた時、スパーンッといつの間にか割り込んできたピチューの尻尾が綺麗にアブソルの顔に命中した。一瞬グキッとか変な音が聞こえたけど大丈夫だろうか。
そして、その光景があんまりにも一瞬すぎて、怒りも吹っ飛んでしまった。するとペシン、と軽くうちの足も叩かれたよ、あれ案外優しい。
ギラリ、光った目を見せたピチューが何だか大きく見えた。
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