太陽と月
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キラキラと白に近い太陽が顔を覗かせている下でアブソルと一緒に、怜さんから貰った荷物に入っていたマップを片手に道を進んでいく。初めてのタウンマップを食い入るように見ていたらふらふらと歩いていたらしく、アブソルに真っ直ぐ歩けと前足で軽く蹴られたので渋々マップから目を離した。
『おい』
「はいはい」
『どこ行くんだ』
「え、トキワシティ?」
マサラから近いのはトキワシティだ。アブソルはちらりと一瞥だけしてまた無言で進んでいく。あの夜、天色さんと何を話したんだろうか。消えない敵意と警戒は未だにピリピリと肌を刺してくるみたいで。それでも一応一緒に歩いてくれるから暫くは安心なのかな。
朝特有のひんやりとした空気が澄みきっていて、何となく息が出来てないような錯覚。綺麗すぎるんだ。
「…眠たいね」
『人間と一緒にするな』
切り捨てるように返された言葉に唇が尖る。ポケモンは夜に強いのかな。種族によるのだろうけど。
本当に朝早くに起きたもんだから目が半分閉じている。元々目がぱっちりと開いていないのにこれは周りから見たらかなり目付きが悪くなっていることだろう。
「…あーマサラって本当に狭いんだね」
『何で迷うのかわからない』
「いやほらちょっとびっくりすることがあってさー、走り回ってたら迷っちゃって」
そうそう、コラッタに出会って全力で逃げたんだっけ。よくよく考えたらあの時腰抜けずに走れたことを褒めたい。
そして回想に浸ってると気づけば会話終了。アブソルとは会話のキャッチボールがこっちの暴投で終わってるような。取ってほしいなファインプレー見たいな。
駄目だ空しい。
「あ、ほらほら一番道路もうちょっとで抜けるよ」
『俺一人だったらもっと早かったけどな』
「…、……な…」
『あ?』
「ううん何でもない」
取りこぼし気味のキャッチボールをしながらちらりと辺りを見回すと自然で埋め尽くされているのがよくわかる。どこを見ても緑だらけで、目が良くなりそうだな、とか。
段々と日も登りきって、朝露も光を浴びてキラキラと天然のスパンコールみたい。
芝生を踏みしめて進んでいると、ようやく町が見えてきた。
「…トキワシティだ」
トキワシティって最後のジムがあるところだけど何でマサラと近いんだろうって常々思ってたなぁ。だって最初ジム出来ないし、あんまりイベント無かったし。ここのジムはあの有名な人なんだろうか。
『おい、人間』
「陽佐ですけど何か」
『俺をボールに入れろ』
全スルーで来た言葉は結構不機嫌に放たれたもので。何でだろうと思ったけどそういえばアブソルは人間嫌いの疑惑があったんだっけ。あと色違い、なのかな。それもあってあんまり見られたくないのかもしれない。
二つ返事でアブソルをボールに入れるとほんの僅かに加わる重みを実感してから、少しこの世界に馴染んだような気がした。
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