太陽と月
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ちょっとパニックで忘れてたけどアブソルがいたんだ、早く出しておけばよかったと後悔しても後の祭。少しでも動いたら刺されそう。きっと、痛いんだ。じくじくと刺されてもいないのに肌が熱くなる。

…あぁ、まただ。また、心臓が痛い。

どくどくと早鐘を打つ心臓を押さえたい衝動に駆られる、どうしよう、なんでこうなっちゃうかな、でも今は一人だけだから、なんとかしないと、…どうしたら、いい? 今はもう、一人ぼっちだから、



「…にぃ、………おね、…ちゃ…」



ぐるぐると混乱の渦を作り出した思考、言えない言葉、それを断ち切るように、ざわりと自然が戦慄いた。



──バリバリバリバリッ



引き裂くような音を鳴らした“何か“に反射的に目を瞑る。暫くすると音が止んだのでゆっくりと目を開けてみるとそこには黒こげになったスピアーが。声を出すことも出来ずに目を見開くとがさり、草の音。



『チッ………なんで…また人間を助けるかなぁ俺は…』



小さく、嫌悪が込められた声は確かに草の中のなにかが放ったもので。木に支えられつつも力なく立ち上がると、ようやく見えたその姿。



「…ピ、チュー…?」



小さく黄色い姿に、ギザギザの尻尾。大きな丸い目は不機嫌そうに少し鋭くなっていて。じろりとこっちを睨んだピチューは次にはその姿に似合わない歪んだ笑みを浮かべた。



『ハッ…なんだよこれ、まるっきり状況一緒じゃねぇか…』



その言葉の意味がわからず、異様な空気が辺りを満たした。一瞬、ゆらりとあの人の影が見えたのは気のせいなのか。

アブソルと出会った時とはまた違う感覚に捕らわれて、ただただ呼吸も忘れたままピチューを見つめていたんだ。


不思議と、守りたくなる衝動が走った。





(揺れる黒髪、それを追っていたあの時)

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