太陽と月
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トキワシティは名前の通りというべきなのか、緑色が多くてこの町の人たちは目が良さそうだなとか思った。やっぱりゲームと違って家がそこそこ建ってるんだね。

そんな視力回復できそうな風景を見ていると、大人しい町並みに映える真っ赤な屋根が。



「おぉおお…ポケモンセンター…」



これがあのポケモンセンターか、当たり前だけどドット絵より大きいね。凄いな外装ピカピカだ。

首が痛くなるまで見上げ続けていると口が開いていたらしく道行く人に笑われてしまった。慌てて顔を下げて頬をぐにぐにと押す。そうだよねポケモンセンターなんてこの世界珍しくもなんとない。

今はまだ朝ご飯の時間帯ぐらいで、日が少しずつ熱を強めだした。



「…お腹すいた」



そうだ怜さんに朝ご飯貰えばよかったのかも知れない、いや厚かましいか。

盛大に鳴ったお腹を擦りつつポケモンセンターじゃお腹は膨らまないとそこを後にする。丁度視界に入ったのは青い屋根。



「フレンドリィショップ…!」



救世主か。いや救世店か。何でもいいからご飯食べたい。朝ご飯は米を食べたい。砂漠に突如現れたオアシスを見た気分だ。

早足でショップに向かうと自動ドアが出迎えてくれた。店員さんに驚かれたような気がするけど髪色は不可抗力なんです荒しでも万引きでもありません。

おにぎりを五つとお茶のペットボトルを一本持ってレジに並んで店員さんに出してからふと思ったけど、財布って。



「ちょ、っと待ってください」



財布、財布。リュックを漁って財布を探していく。本当に色々なもの詰めてくれたな怜さん。

荒しとか違うんで本当と内心慌てつつリュックを漁っていくとようやく財布らしきものを見つけた。中を見るとお金が入っていて、安心しつつ代金を払ってやっとの思いで落ち着けた。



「…食べたら早く次の町に行こう」



おにぎりの包装を剥がして一人座って食べていく。何で焦っているのかわからないけど、少しでも早く色々な場所を回りたいと思った。どうしてだろうか、お腹は満たされたはずなのに全然いい気分にならない。

隣が寂しいなんて暫く感じたこともなかったのに。自然と動いた手がアブソルの入ったボールを握った。カタリ、ボールが揺れたけどごめんね今だけだから。



「………行こう、かな」



深いため息を一つ、立ち上がってボールから手を離す。こういう時頼れる人がいたらと思っちゃうから駄目なんだよねきっと。

沈んだ気持ちを浮上させるためにトキワの森の入り口まで走ってみた。走ったら暗い気持ちも飛んでいくかな、なんて。風を切る感覚が気持ちよかった。


トキワの森、入り口に立つと深い森がずっと続いているのが見える。初めてこんな森に入るな、と緊張しつつも足を踏み入れた。

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