太陽と月
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「それではごゆっくり。また、明日の朝に。」

「はい、ありがとうございます!」



パタンとドアを閉じる音と共にため息が漏れた。駄目だ、すっごい緊張した。今日はこの部屋に泊まっていいとのことなんだけど何だか落ち着かない。今日はもう適当にお風呂に入って寝てしまおう。


椅子から立ち上がって怜さんに用意してもらった洗面用具を持ってお風呂に向かう。ドアを開けると妙に静かな空気に違和感を覚えた。



「…そういや、他の子たちは寝てるんだっけ…」



ここには色々な子たちが住んでいて、もうほとんど寝ているらしい。それを思い出してなるべく静かに廊下を歩いた。といってもすぐそこにあるんだけど。

引き戸を開けて中に入るとすぐそこに鏡が見えた。そういや走ったしボサボサだろうなーと何気なく鏡の前に立つと、だ。



「っ、っー!?」



思わず口を押さえた。頭が真っ白になるってこういうことを言うんだろうか。ふらついた体、持っていた洗面用具が力なく滑り落ちた。



「う、そだ…っ」



消え入りそうに掠れた声はほとんど声量が無く。

だって、そんな、髪の毛は黒のはずで、今まで染めたことなんか一回もないのに。どうして、



「金、色……!?」



違う、正確に言えばちゃんと黒髪はある。あるんだけど所々が金髪になっている。

震える手で持ち上げて見ても変わらず金色のまま。光の屈折なんてあり得ない、なんで金色。なんで気づかなかったんだろう、前髪の一部も金色に染まってるのに。



「……なにこれ…」



どうしよう、本当に意味がわからない。めちゃくちゃ目立つよねこれ。うわ、自分で言うのも何だけど違和感しかない。そりゃそうか。

目も改めて確認したけれど、目は黒いままでホッとした。

それでも思わずまたため息が漏れたのは仕方ない。今日だけでこんなにも突拍子もないことばかりが起きている。ポケモンの世界に来て、アブソルが何でか知らないけどボールに入ってて、そんで着いたところが孤児院で泊めてもらって。



「…なのに、何でか受け入れてる」



それが、どうにも腑に落ちないというか。自分のことなのによくわからない。

さっきよりも深い深いため息をついて、早く寝てしまおうと手早くお風呂に入ることにした。



「あー………」



お風呂の間何をしてたかあんまり覚えていない。覚えてたのはお湯が気持ちよかったなーぐらいで。どこかに意識を飛ばしていたんじゃないかってぐらいぼぅっとしていた。

アブソルは今どうしてるのかな。天色さんに連れていかれたまま帰ってこないけど。

適当に髪の毛を乾かした後、部屋に戻ってすぐにベッドに寝転がった。



「…ねむ…」



ごろんと横になるとすぐに睡魔が襲ってきて。次第に重くなっていくまぶたに逆らうことなくそのまま閉じるとすぐに意識は遠退いてしまった。



「…さて、準備だけしましょうか…選ぶのはあの子ですが」



また違う部屋で怜さんがそんなことを呟いていただなんてもちろん知らなかった。

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