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そうだ、そういやバレンタインだ。

唐突に頭に浮かんだのは年に一度の女の子の勝負日であるバレンタイン。陽佐にとってはあまり縁のないものだったが今年は違う。

感謝の気持ちを込めて、仲間たちにあげようといわゆる義理チョコ、友チョコをあげようと思ったのだ。



「よーし、そうと決まれば早速作ろう。」



幸い、何故か材料があったので早速キッチンに立って準備をする。すぐそばにあったエプロンを身につけ、手際よく下準備に取りかかる。


作るチョコのお菓子は、チョコクッキー。クッキーなら大量生産できるので海璃がいっぱい食べても大丈夫だと思ったのだ。



「えーっと…。湯煎で溶かして…。」



テキパキと下準備をこなし、クッキーの型の準備を始める。

時間が過ぎるのも忘れるぐらいに夢中になっていた陽佐は、後ろからの気配に気づかなかった。



「…おや、何を作っているんですか?」

「ぃぎゃあ!…っ……し、心我?」



後ろからいきなり声を掛けられた陽佐は、奇声を上げて一瞬飛び跳ねた。そして早まる胸を押さえながらゆっくりと後ろを振り向いた。


そこには不思議そうな顔をした心我が立っていて、陽佐の格好を上から下まで見た後にあぁ、と納得した表情を見せた。



「バレンタインのお菓子作り、ですか。」

「へっ……。…あっいやこれは…!」



咄嗟に隠すも既に時遅し。楽しそうに笑っている心我にはもうバレてしまったようだ。

そしてチラリと陽佐の作っているものを一瞥するとどこからかエプロンをもって来た。



「…さて、クッキーを作るなら私もお手伝いさせて頂きますよ。」

「え?何でクッキー作りって…。」

「そんなにクッキーの型を出していたらわかります。」



心我が手に取ったのは先程陽佐が出したクッキーの型。確かにそれを見たら心我ならわかるだろう。

エプロンを身に付けた心我はもう手伝う気満々で、陽佐にはそれを断ることもできなかった。

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