箱庭の鮫
■シナリオデータ
舞台:クローズド
プレイ人数:1人〜2人
プレイ時間:3時間程
推奨技能:目星、図書館、交渉系
■はじめに(KPは必ず読むこと)
本シナリオは、天野月子(現:天野月)さんによる「鮫」「箱庭〜ミニチュアガーデン
〜」「B.G.-Black Guitar+Berry Garden-」の3曲をオマージュして組み上げたシナリオです。
どれも美しい曲なので、よろしければ是非!該当楽曲の方も聴いてみてください。
戦闘は非推奨です。
■あらすじ
馴染みのカフェに来た探索者達。
そこでひょんなことから意識を手放し気がつくとそこは見知らぬ誰かの部屋だった。
▼シナリオ背景
――人間は、ゲームで恋愛をシミュレーションして遊ぶらしい。
高校2年から卒業までの2年間。3年から卒業までの1年間。あるいは大学や、季節が再び巡るまで。
ゴールの決まった純愛、禁断の恋、エゴイズムな火遊び……。
それはこの私、ニャルラトホテプにとってただ一握の興味対象のひとつに過ぎない。
さぁ、周回プレイを始めよう。
人間の人生を使った恋愛シミュレーションゲームを――
リアル恋愛シミュレーションゲームを思いついたニャル様の数奇なお遊びと、そのせいで恋愛観を壊された1人の元女子高生「鮫嶋 羽咲」
半分ヤンデレになりかけた彼女が自分を殺しに来る気でいること、まだどこかでそれを躊躇っていること。
それに気がついたニャルラトホテプが羽咲の深層心理と思い出を使い作り上げた空間に彼女を放り込み、探索者という名の他者の強制的な介入でどう変わるのか。
私を殺しに来たら自分の勝ち、と決め「恋愛ゲームのEXステージ」を遊んでいたのだ。
▼シナリオチャート
部屋に迷い込む
→アイシテの部屋で左の扉を開ける ENDE「どうにもならないBegging Girl」
↓
鮫のぬいぐるみと一緒に羽咲の記憶と宝石を集める
↓
悪いのは全員でENDS「さよならBaby Girl」
悪いのは羽咲でENDA「おやすみBerry Garden」
悪いのは成井でENDB「Bad Guyはほくそ笑む」
悪いのは浮気相手でENDC「引き返せないBroken by a Grudge(ブロークンバイアグラッジ)」
宝石(記憶)を鮫嶋につけないでエンドD「To lose your memory(トゥ ロスト ユア メモリー)」
■NPC情報
▼鮫嶋 羽咲(さめじま うさぎ)
【設定】
成井 テトの元カノ。鮫のぬいぐるみの中の人。
高校卒業からゆっくりと距離を置かれ、春の少し暖かい雨が降る日に別れを告げられた。
実質付き合っていたのは1年ほどだが、羽咲にとっては初めての彼氏で、自身の幼さ故に泥のように愛した。
まるで少女マンガの主人公かとでも言わんばかりに囁かれ続けた甘い愛の言葉、扱われ続けたエスコートに心酔し、恋愛観がおかしくなってしまったせいで成井との関係を精算する手立てが「殺す」以外に考えられなくなる。
間違っていると解っていながらも復讐の道から引き返せずにいる。
本当は振り出しに戻りたいのに気持ちの整理がつかない。
▼成井 テト(なるい てと)
【設定】
軽薄な男。
恋愛ゲームに興味を持ったニャルラトホテプが、リアルギャルゲーを楽しむために姿を変えた存在。
1人攻略したら卒業まで恋愛ごっこを楽しんで次の女へ。
ある時は高校で、またある時は大学で。時には女性の姿で乙女ゲーを楽しみ、エンディング(卒業)を迎えたらリセット。
新しいゲームを始める様に、まるで捨てるかのように涼しい顔で恋人と別れて、を繰り返していた。
▼栖丘 麗音(すおか れいん)
【設定】
成井の新しい攻略対象で大分キツい物言いをする女子大生。
羽咲の3つ年上でナイスバディ。ライダースジャケットの似合うナイスバディ。
ナイスバディ美。
作中では丁度いい具合に成井に狂わされている真っ最中。
■用語・アイテム
▼Broken by a Grudge
怨恨で壊れた
▼Begging Girl
物乞い少女
■導入
◆行きつけのカフェ
6月の初め頃、冷たい雨が降り続く午前10時。君たちは行きつけのカフェへと足を運ぶ。
落ち着いた店内に人は疎らで、君たちの他には2,3人のお客様が各々コーヒーを楽しんでいる。
*RPがあれば少し出来る。
いつから居たのだろうか、君たちは1人の麗しい男性と目が合った。
にこりと笑う彼の笑顔から、何故だか目をそらすことが出来ない。
まるで自分の体だけ時が止まったかのように指先1つ動かせず、君たちの視界は暗転していく。
外で降り続く雨音が厭に耳についた。
◆@アイシテの部屋
柔らかな雨音と足先の水音に、君たちはゆっくりと目を覚ます。
何より先に感じたのはしとしとと降り続く雨の感触。
どことなく可愛らしいその部屋は今までいた馴染みのカフェなどでは無い。
見知らぬ部屋で目を覚ました君たちはSANc(0/1)
【探索箇所】
机、ベッド、ソファ、本棚、部屋全体
【調べる直前に描写】
君たちはそれに触れようと手を伸ばす。そこではたと違和感に気がついた。
雨が降っているというのにベッドやソファ、本、何から何まで一切合切濡れていないことに。SANc(0/1)
◆机
勉強机。
引き出しには鍵がかかっており、机の上にはペン立てと写真立てが置いてある。
▼ペン立て
普通のペン立て。
シャーペン、ボールペン、鋏などが入っている。
▼写真立て
大人びた美しい男性と幼さが滲み出る長髪の可愛らしい女性が写った写真。
同い年だろうか、2人とも学生服を着ている。
▼引き出し
木箱の鍵で開く。
桃色の日記が入っている。表紙を開くと日々の取り留めもないことが書かれていた。
【『桃色の日記』
4/15
高3になってからしばらく経った。
軽音部もついに私が部長だって!気を引き締めて、でも楽しむのも忘れずに頑張らないとね!
4/19
新しくメンバーが入ってきた。
転校生の成井テトくん。同じクラスですっごいイケメンなの!歌も上手いし優しいし、きっと前の学校でもモテてたんだろうなぁ。
5/10
何だろう、気が付くと成井くんに見られてる気がする。
目が合うと笑いかけてくれるし、誰よりも沢山話しかけてくれる。
自惚れかもしれないけど、期待してもいいのかな?
その後しばらくは取り留めもない日常や嬉しかったこと、悲しかったこと、気になる成井くんとだんだん親しくなっていく様子が綴られている。
7/18
今日は終業式。明日から夏休みなんだけど他にもいいことがあったんだ!
部活はあるけど、今までより成井くんに会える日が減っちゃうし、そう思うと少し寂しくて、水飲み場でぼんやりしてたら成井くんに会っちゃって!
少しお話した後、夏休みちょっと寂しいねって言ったら「俺も」って。
「俺、鮫嶋さんの事……好きなんだ。付き合って、くれないかな?」って!彼の方から!
私、びっくりして、嬉しくて!ちゃんと答えられたかな?ふふ、照れた彼、とっても可愛いかった。
愛してるわダーリン、な〜んて。今日から私は成井くんの彼女♪」】
それから白いページが何枚も続き、最後に筆圧の弱い文字で『終わった恋だというのなら、せめて覚悟を決めさせて。』と書いてある。
◆ベッド
桃色の可愛らしいベッド。
うさぎ柄のブランケットがおざなりに置いてある。触るとほんのり温かい。
◆ソファ
君達が眠っていたソファとクッションがある。
▼クッション
触ってみると何か固いものに触れる。
▼クッションを切る
布を切り裂いて中をあらためてみると小さな木箱が入っていた。
▼箱
中にはメモとカギが入っている。
▼メモ
「私はもらっていると思ってた。だって私は無償で渡していたのだから。
ねぇダーリン、私、何がダメだった?」
◆本棚
≪図書館≫
【成功】
本に紛れて本型の小箱があった。
小箱の裏にはスマホの入力パットのようなものが付いており、下の方に「彼の愛称」と書かれている。
▼小箱に「ダーリン」と入れる
君がそう入力すると小箱が開く。
中にはメモと、ハート型をした桃色の宝石が入っている。(ピース1)
▼メモ
「時計の針は右に進むもの。過去を振り返ってはいけないよ。」
◆部屋全体
部屋を見渡してみるとわかるだろう、扉が2つあり、1つは「右」もう1つは「左」と書いてある。
飾ってある時計は10時を指し、秒針は規則正しく動いている。
四方を壁に囲まれているというのにこの部屋の中には雨が降っている。
雨は降りやむことなく部屋に溜まり続けている。
≪アイディア≫
【成功】
あまり時間に余裕は無さそうだと気が付く。
※KP情報:特に時間制限などは無いが、緊張感は持ってほしい為。)
ふと、今はまだ低い水位の下の方に鮫のぬいぐるみが沈んでいるのが見えた。
◆鮫のぬいぐるみ(鮫嶋)
拾い上げてみると、そのぬいぐるみはほんのり温かく、まるで生き物であるかのように小刻みに震え小さく呻いていた。
命あるぬいぐるみを目の当たりにした君たちはSANc(0/1)
≪目星≫
腹の部分に4つ、ハート型の窪みがある。よく見ると寒さで弱っているようだ。
【成功】
「あるべき場所へ放して」と書かれたタグと「酸いも甘いも大事なもの」と書かれたメモを見つけた。
弱っている様子を見て、早く温めなくてはと感じた。
【失敗】
「酸いも甘いも大事なもの」と書かれたメモを見つけた。
弱っている様子を見て、早く温めなくてはと感じた。
▼鮫嶋をブランケットで温める
ぬいぐるみをブランケットで包んでやると、女性の声で小さく「ありがとう……」と言ったのが聞こえた。
しばらくすると落ち着いてきたのか、鮫のぬいぐるみは震えが止まりブランケットの中でぬくぬくしだす。
Q.名前は?
A.鮫嶋 羽咲(さめじま うさぎ)
Q.生まれた時からその姿?
A.そんなわけないじゃない。やっと眠れたと思ったのに気が付いたらこんなところでこの姿、最悪よ。
Q.成井について
A.私の彼氏……なんだけど、今はなんか記憶があいまいなのよね。
Q.ここは君の部屋?
A.覚えてないわ。
※KP情報:今の鮫嶋は泣かない、謝らない女の子。
成井に嫌われたくない一心で、強い女の子になろうと無理をしている様子。
▼鮫嶋の腹に宝石を嵌める
鮫嶋のお腹の窪みに宝石を嵌めると、彼女は少しの頭痛を訴えた後「アイシテの部屋」の情報を思い出す。
「私……そう、思い出した。ここは私の部屋。
彼は私をハニーと呼んでくれて、だから私は彼をダーリンと呼んだの。」
※KP情報:宝石は鮫嶋の記憶のため、取り外すとまた記憶を失う。
◆扉
※KP情報:時計の針は右へ進む。右は未来、左は過去。
▼左の扉
≪聞き耳≫
【成功】
「なんだ、見捨てるのかい?」と聞こえた気がした。
【失敗】
ドアノブに手をかけるとなんだか少し物悲しい気持ちになった。
進んでいいのだろうか?
▼それでも開ける
左の扉へ進むとENDE「どうにもならないBegging Girl(ビギング ガール)」へ。
▼右の扉
扉を開けるとまるで無とでもいうように真っ白な空間に雨だけが降り続いており、用水路のような水溜りがまるで道標のように先へと続いている。
君達が先へと進んでいくと、丁度道の中間辺りであろう場所で妙な感覚を覚える。
まるで無理矢理急カーブをさせられたような気味の悪い感覚を覚えSANc(0/1)
◆Aキズツイテの部屋
君達がそのまま、まっすぐ道なりに進んでいくと、道の先に扉が現れた。
見ると扉にはハート型の窪みがある。
君達が鮫嶋のお腹を窪みに合わせると、カチッと音がして扉が開く。
中へ入っていくと先ほどと全く同じ間取り、家具の部屋が広がっていた。
≪目星≫
【成功】
間取りも家具も何一つ変わらない部屋。
なのに先ほどの部屋は桃色で女性らしい、可愛らしい印象を受けたのに対して、この部屋はどことなく悲しみの満ちた青色を連想させられた。
【探索箇所】
机、ベッド、本棚、ソファ、扉
◆机
机の上には日記とペン立て、そして伏せられた写真立てが置いてある。
▼写真立て
伏せられた写真立てを起こしてみると、入っているのは先ほどの部屋で見たものと同じ写真だ。
しかし男性の部分は黒く塗りつぶされ、落としたのか打ち付けたのか、硝子部分にヒビも入っている。
▼青色の日記
【『青色の日記』
「4/10
大学に入学したころからダーリンと連絡が取れない。
LINEも既読スルーだし電話にも出てもらえない。
なんでかな?私、知らないうちに何かしちゃったのかな?
4/20
嫌われたくないし、しつこいって言われたくないから我慢してたんだけど、心配でとうとうダーリンのお家に行ってしまった。
遠くの角を曲がってくるダーリンが見えたから声を掛けようとしたんだけど、掛けられなかった。
彼、私とは全然タイプの違うかっこいい雰囲気の女の子と楽しそうに歩いてた。好きじゃないって言ってたライダースジャケット着て、手も、繋いで。
もしかして……いや、まさか、まさかそんなはずない!だってあんなに私に好きだって、愛してるって言ってくれたのに!何の前触れもなくそんなこと、ダーリンに限ってあり得ない!」
その後、話をしたくて何度も電話を掛けたり家に行ったりしたこと、それなのに会えない、話せない日々が長く続いたことが疲弊した様子で書かれている。
「5/20
彼がやっと話をしてくれる気になったみたい。近くのカフェで待ち合わせ。」】
そこまで読むと探索者に眩暈がする。
君は無理矢理に目を開こうとするが瞼は重く、視界がぼやける。
ひとつ瞬きをすると、そこに見える景色はいつの間にか程よく気の生い茂るお洒落なカフェに変わっていた。
暖かい雨が降り、目の前には麗しい男が座っている。
君の体は言うことをきかず、自分の体ではないような感覚にSANc(1/1D3)
男はまるで何でもないことのように涼やかな顔で淡々と君に言う。
「高校生の恋なんて、疎遠になれば風化して自然消滅するものだと思ってたんだけどな。俺としては十分愛したつもりだし、夢も見せたし見たつもりだったんだよ。」
そして少しの沈黙と、面倒くさそうな溜息の後、男は「はっきり言うよ。別れよう。」と続けた。
君の視界はぼやけ、その体からは君ではない、女性の震える声で「ごめん、よく、きこえないや。なんて、言ったの?」と発した。
≪目星≫
【成功】
勝ち誇った顔の見知らぬ女が、男の腕に寄りかかってこちらを嗤っているのが見えた。
≪聞き耳≫
聞き覚えのない女性の声で「残念だったねぇ?お子ちゃまはもう用済みなのよ。」と聞こえた。
はっと気が付くと君は日記を読んだ時と同じ状態で立ち尽くしていた。
◆ベッド
他の一切合切が濡れていないのにも関わらず、枕のみがぐっしょりと濡れていた。
≪目星≫
【成功】
よく見ると薄っすらと箱のようなものが入っているのが見えた。
▼箱
先ほどの部屋で見た箱と同じような物だ。
入力パットがあり、下の方には「彼女に必要な言葉」と書いてある。
入力できるのはカタカナ五文字を一度きりのようだ。
▼箱に「アイシテル」と入れる
小箱が開き、中から緑色をしたハート型の宝石が出てくる。
※KP情報:ここで緑の宝石を入手した場合、鮫嶋は過去を捨てきれない。現実に戻ってきても恋愛恐怖症になる。
▼箱に「アイシテタ」と入れる
小箱が開き、中から青色をしたハート型の宝石とガーデンの描かれたカードが出てくる。
▼カード
「サメは色覚が無く、中でもオオメジロザメはひどくしつこいらしい。あぁ、これはまるで……」
▼箱にその他の言葉を入れる
中は空っぽだった。
※KP情報:ここで青の宝石を入手した場合、鮫嶋は過去を受け入れることができる。また、ラストで説得を試みる場合+10の補正を与えられる。現実に戻ってきたら、しばらく恋はしないと言うが、いい人に出会えればまた誰かを好きになることができる。
▼鮫嶋のお腹に2つ目の宝石を嵌める
鮫嶋のお腹に宝石を嵌めると、先ほどと同じようにまた少しの頭痛を訴えた後「キズツイテの部屋」の情報を思い出す。
声を掛けるなら彼女の顔色が少し悪くなり「あたし……ぁ、違、違うの、私、ダーリンに、ダーリンの、嫌がるとこ直して……大丈夫、大丈夫よ。私は大丈夫……」と混乱しながら答える。
◆本棚
≪図書館≫
【成功】
白い表紙に黒い紙のノートを見つけた。
【「俺があんな下等生物を好きになるわけないのに、ほんの遊びのつもりだったのを本気になったりして。愛してる、なんて好感度アップの為の嘘にあんなに喜んでさ。
愚かで、滑稽で、狂ってて!今まで遊んだ恋愛ゲームのキャラの中でも最高に面白いおもちゃだよ!」】
※KP情報:成井ことニャル様の書いたもの。日記とは筆跡が違う。
◆ソファ
メモが落ちている。
「アイシテ、ユルシテ、コロシテ……どれも私に縁深い。でも、このままじゃダメ。」
≪目星≫or裏を見る宣言
【成功】or裏
【「過ぎてしまった過去は変えられない。
未来が変わらないというのなら気持ちを清算しなくちゃ。
最初から遊びのつもりだったならそれでいい。
だから嘘をついて、そのまま騙していて。」】
※KP情報:別れる事実は変えられない。今まで言ってきた「愛してる」が嘘ならばその嘘をつき続けてほしい。「愛してた」なら過去に「愛してる」と言った嘘をつき続けたまま「別れる未来」も変えずに清算できる。「愛してる」では嘘をつき続けることは出来るが「鮫嶋にとっての別れる理由」が無くなり過去を清算できなくなる。
◆扉
左は来た方の扉。右はここに来る時と同じような道が続いている。
≪聞き耳≫
【成功】
部屋を出ようとドアノブへ手をかけた時、後ろから女性の声が聞こえた。
「泣き虫なのも、子供っぽいのも、君が嫌いだって言うところ全部、全部直すから!
だから、お願いだから、別れるなんて言わないで……」
振り返ると扉の向こうには涙と鼻水で酷い顔になった女の子(羽咲)が見え、無情にも扉はそのまま閉まった。
※KP情報:戻って扉を開くことは出来るがそこには誰もいない。
右の扉を開けて進んで行くと、先ほどと同じように道の中間辺りで急カーブをするような感覚を覚える。
そのまま奥へ進んでいくと、今度はハート型の窪みが2つある扉の前に出た。
同じように鮫嶋のお腹を嵌めると扉が開く。
◆Bニクンデの部屋
君達が扉を開けると、今まで通ってきた部屋と同じ家具が置いてある。
あるのだ。が、部屋は荒れ、傷つき、正に惨状。雨脚が強くなり、まるで風のない嵐のようだ。
最初に見た桃色の部屋の面影は無く、目に見えて毒々しい。
赤、紫、黒。雨に混じって今にも淀みがしたたり落ちてきそうな部屋の状態に、君たちは喉の奥が酸っぱくなるような感覚を覚える。凄惨な部屋の状態にSANC(1/1D4+1)
【探索箇所】
机、ベッド、本棚、ソファ、扉
◆机
倒れた写真立てと日記がある。
▼写真立て
君が倒れた写真立てを手に取ると、何が映っているのか目視する前に紫の炎を舞い上げて写真立てごと燃え上がり、一瞬にして塵になった。驚いた君はSANC(0/1)
▼濃い紫の日記
【『濃い紫の日記』
今までと違い赤い文字で書かれている。
「5/29
愛したの、あいしたの、アイシテ、愛した……のに……。
あいつの所為なの?あいつがあたしからダーリンを奪ったの?
なんで、なんで!なんで!!
誰が悪いのあいつがわるいの、あいつが、あいつがあいつがあの女!
ゆるさない!ゆるさないゆるさない!!あいつもダーリンもユルサナイ!
私だけのダーリンを奪ったあいつも、簡単に心を奪われたダーリンも!
許さない……死んでしまえばいい。死なないというのなら、いっそこの手で……。」】
≪目星≫
【成功】
赤い文字で埋め尽くされた文字の中に、小さく白い文字を見つけた。
「悪いのは本当にあいつとダーリンだけだった?」
◆ベッド
引き裂かれたようにズタズタになっており、綿の出た枕にはアーミーナイフが深々と刺さっている。
※KP情報:アーミーナイフは何があっても決して手に入れることは出来ません。
◆本棚
≪目星≫
【成功】
ガーデンの絵の書かれたカードが落ちてきたのに気がついた。
【『愛して、傷付いて、憎んで……その道をずっと選んできたのは誰?』】(エンドSヒント)
※KP情報:鮫嶋の文字
≪図書館≫
【成功】
白い表紙に黒い紙のノートを見つけた。
【「さぁおいで?殺しにおいで?
憎いと言うのならば、愛してるというのならば、全身全霊をかけてここへおいでよ。」】
触っている部分が少しザラついた。
どうやら何か掘ってあるようだ。
※紙の上から鉛筆で擦ると以下の文字も読むことができる。
【「受け止めてやるつもりは無いけどね」】
◆ソファ
赤黒く変色し、抉られたソファ。抉られた部分にねじ込むようになにか入っている。
▼何か
引っ張り出してみると、今までにも見た本型の小箱……ただしそれは他二つと違い赤黒くシミがつき始めている。
入力フォームの代わりに選択ボタンがいくつかついている。
悪いのはだれ?
1、鮫島羽咲
2、成井テト
3、もう1人の女
4、全員
1を選ぶと羽咲の殺意が自分に向く。(赤い宝石)エンドA
2を選ぶと成井へ(黒い宝石)エンドB
3を選ぶと浮気相手へ(紫の宝石)エンドC
4を選ぶと誰を責めればいいのかわからなくなる。(噛み跡で傷ついた宝石)エンドS
▼鮫島に3つ目の宝石を嵌める
3つ目の宝石を嵌めた瞬間、彼女の瞳は急速に濁りだし、節穴の様な闇を宿す。
君たちが抱えているその体は、可愛らしい薄青色を飲み込むかのようにドス黒い液体がしみ出てくる。突然の変貌、異様なオーラに気圧された君たちはSANC(1/1D3)
「あ……」と小さくか細い声が聞こえたかと思うと、真っ黒に変色したサメのぬいぐるみはもう動かなくなっていた。
※KP情報:この後にベッドを見るとアーミーナイフが無くなっている。
◆扉
先程と同じく左は来た方の扉。右はここに来る時と同じような道が続いている。
◆エンドS『さよならBABY GIRL』
同じように進んでいくとまた、急カーブをさせられる感覚に襲われる。
3つのくぼみがある扉へ先程と同じように鮫の腹をあてがうと、扉はがちゃりと音を立てて開いた。
中は温室のようなガーデンが広がっており、草を撫でる優しい風が吹く中、最初の部屋で見た写真の男と、長い髪を揺らした写真の女がアーミーナイフを構えて対峙していた。
「あの人たちとここまで一緒に記憶を見て来てようやっと決心がついたの。君は間違いなく悪い男だったし、あの子は私の幸せを奪った子。でも、私も間違いなく自分の恋に盲目だった。だから君のさよならを受け入れる。今までごめんなさい。もう終わりにしましょう」
そう言うと彼女、鮫島羽咲はアーミーナイフで自らの長い髪をばっさりと切り裂いた。
「そう。それが君の……君たちの答えか。」
男はつまらなそうにそう言うと、1つ指を鳴らす。
それと同時に鮫島は意識を失ってその場に崩れ落ちた。
「あーぁ残念。クリアならずって感じ?エクストラステージ、やっぱ難しいな。まぁ、何はともあれお疲れ様?聞きたいことがあるんなら答えてあげるし、無いんならもう帰っていいよ。」
そう言って彼は鮫島に触れ、彼女が消える代わりに出来た白いハート型の宝石を君たちに投げ渡す。
※KP情報:RP、質問などあれば成井は答えます。殴るのであれば一発だけなら受けますが、気が短いので二発目以降は探索者を殺しに来る。
「そろそろ十分でしょ?俺、飽きちゃった。出口はあっち。」
指の先を目で追うと、扉が見えた。
「運が悪けりゃまた会えるかもね?」
彼は君の耳元でそう囁くと、楽しそうに「じゃーねぇ」と声を残して消えた。
▼扉をくぐる
扉をくぐると、これまでに3度と見てきた道が続いていた。
▼【2番目の宝石が青の場合】
歩き続けていくと、やはり今までと同じような位置で急カーブをさせられる感覚に襲われる。
辿りついた扉に鮫の腹をあてがいノブを回す君たち。
気がつくと、あの不思議な空間に行く前に居たカフェのカウンター席に君たちは座っていた。
不意に誰かが店内に入ってくる音がした。
振り返ってみると、ショートボブに切りそろえた髪に泣き腫らした顔、それでもどこかスッキリとした顔の鮫島が笑顔で店員に声をかけた。
あぁ、きっと彼女はもう大丈夫だ。END
▼【2番目の宝石が緑の場合】
歩き続けていくと、今度は急カーブをさせられる感覚が無いまま扉へと辿り着く。
扉に鮫の腹をあてがいノブを回す君たち。
気がつくと、あの不思議な空間に行く前に居たカフェのカウンター席に君たちは座っていた。
不意に誰かが店内に入ってくる音がした。
振り返ってみると、ショートボブに切りそろえた髪に泣き腫らした顔、どこか憂いを帯びた表情の鮫島が店員に声をかけた。
あぁ、これもきっと彼女にとってひとつの成長なのだろう。END
◆エンドA『おやすみBerry Garden』
同じように進んでいくとまた、急カーブをさせられる感覚に襲われる。
3つのくぼみがある扉へ先程と同じように鮫の腹をあてがうと、扉はがちゃりと音を立てて開いた。
中は温室のようなガーデンが広がっており、草を撫でる優しい風が吹く中、最初の部屋で見た写真の男と、長い髪を揺らした写真の女がアーミーナイフを構えて対峙していた。
「あの人たちとここまで一緒に記憶を見て来たの。貴方が憎い。あの子が憎い。でも誰よりも悪いのは……」
そう言うと彼女は手首を反し、自らの胸に向ける。
▼【青い宝石がある場合のみ説得可能】
ここで説得に成功した場合は以下の描写が続く。エンドS(緑の宝石)へ。
『あぁ、そうか、そうよね。君は間違いなく悪い男だったし、あの子は私の幸せを奪った子。そして私も、自分の恋に盲目な幼い女だった。ごめんね、気づかせてくれてありがとう。成井くん、君の「さよなら」を受け入れるよ。もう、終わりにしよう』
そう言うと彼女、鮫島羽咲はアーミーナイフで自らの長い髪をばっさりと切り裂いた。
「そう。それが君の……君たちの答えか。」
男はつまらなそうにそう言うと、1つ指を鳴らす。
と同時に鮫島は意識を失いその場に崩れ落ちる。
「あーぁ、おしいけどクリアならずって感じ?エクストラステージってやっぱ難しいな。まぁ、何はともあれお疲れ様?聞きたいことがあるんなら答えてあげるし、無いんならもう帰っていいよ。」
そう言って彼は鮫島に触れ、彼女が消える代わりに出来た白いハート型の宝石を君たちに投げ渡す。
※KP情報:RP、質問などあれば成井は答えます。殴るのであれば一発だけなら受けますが、気が短いので二発目以降は探索者を殺しに来る。
「そろそろ十分でしょ?俺、飽きちゃった。出口はあっち。」
指の先を目で追うと、扉が見えた。
「運が悪けりゃまた会えるかもね?」
彼は君の耳元でそう囁くと、楽しそうに「じゃーねぇ」と声を残して消えた。』
▼扉をくぐる
扉をくぐると、これまでに3度と見てきた道が続いていた。
歩き続けていくと、今度は急カーブをさせられる感覚が無いまま扉へと辿り着く。
扉に鮫の腹をあてがいノブを回す君たち。
気がつくと、あの不思議な空間に行く前に居たカフェのカウンター席に君たちは座っていた。
不意に誰かが店内に入ってくる音がした。
振り返ってみると、ショートボブに切りそろえた髪に泣き腫らした顔、どこか憂いを帯びた表情の鮫島が店員に声をかけた。
あぁ、これもきっと彼女にとってひとつの成長なのだろう。END
▼【緑の宝石、又は説得をしなかった場合】
君たちが声を発する暇を与えず、彼女はその胸にナイフを突き立てる。
今まで己が愛と信じて受け取ってきた言葉、表情、思い出。裏切りと感じて溜め込んできた傷、怨み……その全てを自分の中から抉り出そうとするかのように躍起になり、震える手で、何度も何度も……
だと言うのに彼女は何故、あぁ何故まだ生きているのか。
死ぬほどの痛みと苦しみゆえに溢れ出す嗚咽、涙、大量の血液に混じった唾液を滴らせながら声が漏れる。
「な……で、なぜ……死ねな……おぇ……」
普通では有り得ない自殺、その凄惨な光景にSANC(1D3/1D6)
「なるほど。」
男は興味深げに鮫島を見下ろすように眺め、そして続ける。
「君たちと共に居ることでどんなエンドにたどり着くのかと思っていたんだ。これはノーマルエンドって感じかな?これはこれで面白い。
きっと彼女は死ねないよ。彼女が満足し尽くさない限りね。俺は面白いけど、こんなもの人間が見てても面白くないんじゃない?帰るんならこれ、あげるよ。帰り道はあっち。
そんなんでも1回分位はあるんじゃない?」
そう言って彼は君たちに着々とひび割れていくハート型の白い宝石を手渡すと、もう君たちに興味は無くなり、面白そうな、あるいは愛おしそうな顔で鮫嶋を眺めている。
ボロボロになっていく鮫のぬいぐるみに宝石を嵌め、出口と教えられた扉のくぼみに先程までのようにぬいぐるみの腹をあてがう。
ぬいぐるみは手元からボロボロと砕けだし、世界の崩壊と共に君たちの意識は暗転していく。
雨音にハッと目を覚ますと、そこはあの少女の部屋に行く前に居たカフェ。
雨は未だ降やむ気配はない。
ふと、店内ラジオからニュースが聞こえてきた。
「昨晩、鮫嶋 羽咲さん19歳の凄惨な変死体が発見されました。警察は他殺、自殺の両方面から捜査を始めており……」
この事件の真実は君たちだけが知っている。
きっと彼女は今もあの箱庭で、永遠に眠るための自殺を繰り返しているのだろう。END
◆エンドB『BAD GUYは ほくそ笑む』
同じように進んでいくとまた、急カーブをさせられる感覚に襲われる。
3つのくぼみがある扉へ先程と同じように鮫の腹をあてがうと、扉はがちゃりと音を立てて開いた。
中は温室のようなガーデンが広がっており、草を撫でる優しい風が吹く中、最初の部屋で見た写真の男と、長い髪を揺らした写真の女がアーミーナイフを構えて対峙していた。
「あの人たちとここまで一緒に記憶を見て来たの。私から貴方を奪ったあの子が憎い。でも、あの子よりずっと、ずっとずっと貴方の方が怨めしい……!!
あんなに愛してるって言ったのになんの前触れも無く心変わりだなんて、突然音信不通になって、切り捨てるみたいにあっさり無かったことにしようだなんて許せない。許せない許さない!!殺してやる……殺してやる!!」
君たちが動き出すより早く、彼女は男の腹にアーミーナイフを突き立てた。
殺人現場を目撃した君たちはSANC(1/1d6)
腹を刺された男は腹から、口から、鮮血を流す。
見ているこちらの血の気が引く程に朱く、紅い。
腹をまさぐり男は己のものらしき血液を確認する。
「あ、はは……」
汚れることも構わず血のついた手のひらで髪を掻き上げてみせ、酷く醜悪な顔を隠しもせず、にやりと笑った。
「俺の、勝ちだ。」
君たちに背を向けていた彼女がよろめき背中側に倒れる。
そこで君たちは初めて気がつくことだろう。彼女が男に向けて突き立て、今も男の腹に刺さっているナイフの先端が、何故か彼女の腹から突き出ていた。
「ど……して……確かに、わ、たし……」
男は鮫嶋を見下ろし楽しそうに笑う。
「はっ!おいおい気がついてなかったのか?エンディングですら愚かだな。ここはお前の世界じゃない。……俺の世界だ。」
そう言って成井は自身の腹から血にまみれたアーミーナイフを無造作に引っこ抜く。
それと同時に苦しむ鮫嶋の腹からもナイフが引き抜かれ、彼女のくぐもった悲鳴が響き渡る。
成井はなんてことない顔でそのまま君たちに向き直り
「いやぁ、ほんとにありがとねぇ。君たちのおかげで無事にステージフルコンプ?って感じ。機嫌がいいから質問にもなんだって答えてあげちゃう。
あぁ、でも手を出すなら俺もやり返すからそのつもりでね?」と不気味な顔で笑った。
※KP情報:RP、質問などあれば成井は答えます。殴るのであれば一発だけなら受けますが、気が短いので二発目以降は探索者を殺しに来る。
「そろそろ飽きてきちゃったしもういい?
ちなみに帰り道はあっち……っと、そういえば最後のピースか。ちょっと待ってて。」
そう言って彼は気を失った鮫嶋の元へ行くと、血の溢れる鮫嶋の腹を裂きその腹の中へ手を入れる。
衝撃的な光景にSANC(1D3/1D6)
腹の中から取り出した赤黒い宝石を軽く拭いたあと君たちに押し付ける。
「帰り方はいままで通りだし分かるでしょ?じゃーねぇ。縁があったらまた会おうね?」
そう言って彼は君たちに興味を無くす。
引き裂かれた鮫のぬいぐるみに宝石を嵌め、出口と教えられた扉のくぼみに先程までのように辛うじて綺麗に残っているぬいぐるみの腹をあてがう。
ぬいぐるみはボロボロと崩れ落ち、それと同時に世界が崩れ始め、君たちの意識は暗転していく。
雨音にハッと目を覚ますと、そこはあの少女の部屋に行く前に居たカフェ。
雨は未だ降やむ気配はない。
ふと、店内ラジオからニュースが聞こえてきた。
「今朝未明、女子大生がアーミーナイフで滅多刺しにされる事件が発生致しました。刺された女子大生は意識不明の重体で……」
君たちの記憶に焼き付いた鮫嶋羽咲の死に様が瞼の裏にまで浮かび離れない。END
◆エンドC『引き返せないBroken by a Grudge(ブロークンバイアグラッジ)』
同じように進んでいくとまた、急カーブをさせられる感覚に襲われる。
3つのくぼみがある扉へ先程と同じように鮫の腹をあてがうと、扉はがちゃりと音を立てて開いた。
中は温室のようなガーデンが広がっており、草を撫でる優しい風が吹く中、最初の部屋で見た写真の男と、長い髪を揺らした写真の女がアーミーナイフを構えて対峙していた。
「あの人たちとここまで一緒に記憶を見て来てわかったの。君も私も悪くない。悪いのはあの女。君に色目を使う全てのもの!君の彼女はあたしだけ!君にはあたし以外何も必要ないわ!そう、そうよ、だってダーリン本当はあたしを愛してるもんね?あぁ、でもダーリンだって男の子だもの、また魔が差しちゃうかもしれないね?邪魔する子には消えてもらわなくちゃ。きゃはは!!」
酷く主悪な顔で彼女は笑う。愛おしそうに男を見つめ、その手のナイフを弄ぶ。
くるりと逆手にナイフを持ち替えたかと思うと足元から紫の炎が噴き上がって彼女を燃やしていく。
人ひとりが音を立てて燃え上がり灰になっていく瞬間を目の当たりにした君たちはSANC(1D3/1D6)
恍惚な笑みを浮かべ、高笑いを続けたまま彼女は焼失し、消えた炎の跡地には紫色の宝石が転がり落ちていた。
残された男はその宝石をゆっくりと拾い上げると、堪えきれずに笑い出す。
「これはこれは、もういらない玩具だと思っていたけど大きな勘違いだったみたいだ!恋愛ゲームの次はスピンオフ作品のホラーゲーム♪君たちには感謝しなくちゃあねぇ?」
そう言って彼、成井テトは心底楽しそうに、ニタリと笑った。
「これは君たちにあげるよ。帰るのに必要だからね。出口はあっち。じゃあ、縁があったらまた会おうね?」
君たちが宝石を受け取ると瞬きをする間に成井は姿を消した。
後に残されたのは君たちと、いつの間にか樹海の片隅のようになった気味の悪いガーデンだけ。
焼け焦げた鮫のぬいぐるみに宝石を嵌め、出口と教えられた扉のくぼみに先程までのようにぬいぐるみの腹をあてがう。
ぬいぐるみは手元を離れ紫色に燃え上がり、世界の焼失と共に君たちの意識は暗転していく。
雨音にハッと目を覚ますと、そこはあの少女の部屋に行く前に居たカフェ。
雨は未だ降やむ気配はない。
ふと、店内ラジオからニュースが聞こえてきた。
「今朝未明、女子大生がアーミーナイフで滅多刺しにされる事件が発生致しました。犯人は鮫嶋 羽咲さん19歳、現行犯逮捕です。刺された女子大生は意識不明の重体で……」
きっと彼女は何度だって同じ過ちを繰り返し、変わる事などないのだろう。
それは彼が彼女を壊し尽くすまで、彼が彼女を殺すまで永遠に終わらない最悪の袋小路。END
◆エンドD 『To lose your memory(トゥ ロスト ユア メモリー)』
同じように進んでいくとまた、急カーブをさせられる感覚に襲われる。
3つのくぼみがある扉へ先程と同じように鮫の腹をあてがうと、扉は“がちゃり”と音を立てて開いた。
中は温室のようなガーデンが広がっており、草を撫でる優しい風が吹く中、最初の部屋で見た写真の男と、長い髪を揺らした写真の女がアーミーナイフを構えて対峙していた。
次の瞬間、彼女……鮫嶋羽咲はアーミーナイフを取り落とす。
「あ……えっ、と。はじめ、まして?私、気がついたらこの庭に居て……帰り道とか知りませんか?」そう、男に問いかける。
まるで何も無かったかのように、何もかも忘れてしまったかのように。
男に促されて扉に手をかけると、鮫嶋は言う。
「貴方には初めて会うはずで、話すのも初めてで、なのに……」
そして振り返り、涙と鼻水と苦痛に歪んだ顔で続ける。
「なのに、なんでか酷く哀しくて、苦しくて……何か、大切なものが足りなくて……ごめんなさい。」
そして君たちの方を見て「ごめんなさい、多分さっきまで一緒に来てくれてた人、だよね?あなた達もここの人だったのかな?ありがとう。帰り道、わかったから帰るね。」
そう言って虚ろな顔で笑い、扉をくぐる。
残された男は1つため息をつき、君たちに「忘れさせることを選んだんだね」と声を掛ける。
「忘れて蓋をしてしまうこと、確かにそれもひとつの答えだ。けど、今回は解決ではないんだよね。臭いものに蓋をしたところで、臭いの元をそのままにしたら遅かれ早かれそのうち漏れ出てくるんだからさ。まぁ、もう俺には何の関係も無いけどね。」
男はいつの間にか君たちが持っていたはずの真っ黒なサメのぬいぐるみを尻尾を掴んで持っており、空いた手で君たちの手を指さして言った。
「帰り道はその宝石3つで十分だよ。運が悪けりゃまた会おう。」
瞬きの間に男は消え、代わりに3つの窪みのある扉が目の前に現れていた。
宝石を窪みにはめて扉を開くと、いつの間にか君たちはあの部屋に行く前の状態でカフェの椅子に腰掛けていた。
≪聞き耳≫
【成功】
「そんな女だと思わなかった。」という声と共に、何かに水がかかるような音がした。
【失敗】
何かに水がかかるような音がした。
振り返ってみると、目に映るのは泣きながら店を出ていく男性と無表情で頭から水を被りその場に座る見知った顔の女の姿。
タオルを手渡して戻ってきたマスターがため息混じりにこぼす。
「あの子、元カレと別れてから随分変わっちゃったみたいでね……短いスパンで色んな男の人と付き合ったり別れたり、二股三股なんてするようになっちゃったのよ。」END
◆エンドE 『どうにもならないBegging Girl』
君たちは声に逆らい左の扉を開いた。
≪聞き耳≫
【成功】
酷く性悪で楽しげな声が聞こえる。
「あーらら残念。この人達はハズレだったみたい。通りすがり、轢かれた兎の死体を横目に通り過ぎる無関心な一般人。
ま、せっかくだから忘がたい死体の様子だけでも特等席で見て帰んなよ。」
【失敗】
酷く性悪で楽しげな声が聞こえる。
「あーらら、探索しないんだ?ま、せっかく来てもらったんだし忘がたい死体の様子だけでも特等席で見て帰んなよ。」
かと思うと君たちの視界は、体は、別の誰かの中に入ったような感覚を覚える。
視界の端にチラつくアーミーナイフ。
まず1人、怯える知らない女の髪を鷲掴み、あえて急所を外して1箇所2箇所とその柔らかな肉を勢い任せに刺しては、痛みを感じやすい様にゆっくりと引き抜いてを繰り返す。
自分の喉からは正気を失った別の女の笑い声が聞こえる。
自分ではない、自分では決してないというのにそれは残忍な程にクリアで、あまりにも現実だった。否、現実的なんてものでは無い、それは『現実』だ。
この狂った女の体に、心に、自分が全て飲み込まれていくかのような不快感にSANC(1/1D6+1)
呻き声すらせず、ただ重たくなった“人間だったもの”をその手が無造作に投げ捨てると、それは”ぐちょ……”と耳障りな音を立てて床に転がる。
そして次に君の感覚を乗せた体は男へと向く。胸ぐらを掴み、同じようにナイフをめり込ませる。
≪目星≫
【成功】
ニヤリと笑う男の口元が見えた。
【失敗】
自分の精神状態はそれどころでは無い!
ズブ……と刺したはずのナイフの鈍痛は女を通して自分の腹へ。
「ど……しで……」
見上げた時に映る男の姿は吐き気をもよおすほど美しく、すがりつきたくなるほど醜悪だった。
男は苦しむ自分の腹から血にまみれたアーミーナイフを無造作に引っこ抜くと、先程経験した殺し方と全く同じ所作で自分の体へナイフを刺していく。
痛い、熱い、分からない、なにがなんだか分からない。
ろくに抵抗もできず鼻歌交じりに自分が殺されていく恐怖にSANC(1/1D6+1)
体が動かず息苦しさを覚え始めたところで”ぽい”と床へと放られる。
君の視界を覗き込むように見る男はにこりと笑い、問いかける。
「特等席、楽しかった?」
自分の体から”ぐちょ……”と音がした瞬間世界が変わる。
目の前には心配そうに君を見つめる店のマスターの姿。
あの光景は、あの体験は一体なんだったのか。果たして自分は何を求められていたのか。
後には知りたくなかった感触と最悪の結果だけが遺された。END
■生還報酬
エンドA〜Dまでの場合1D6のSAN値回復
エンドSの場合み1D6+3のSAN値回復とAF《鮫のぬいぐるみストラップ》
【鮫のぬいぐるみストラップ効果】
ダイスの出目を1度だけワンランク上に引き上げる。
ファンブルなら失敗へ、失敗なら成功へ。
使用の際は必ずKPに許可を取ってください。
使用後はただの可愛いぬいぐるみに戻ります。
■あとがき
CoCシナリオとして、初心者の方にもシステムに慣れた方でも手軽に遊んでいただけるような作品を目指して出来上がったシナリオです。
楽しんでいただけたら幸いです。
人は様々な選択肢の前に立ち、時には人生を大きく変えてしまう様な1歩を踏み出します。
今回探索者が出会った鮫ぬいの羽咲ちゃんはそんな小さくて大切な1歩の前にボロボロの状態で立っているのです。
自分の選んだ選択肢の前で、踏み出すための勇気を振り絞りながら迷っているのです。どんな形であれ『未来に進む』ために。
探索者の皆様は『自分の意見』という形で、彼女の迷える1歩を後押ししました。
そこに責任を感じるか感じないかは勿論人それぞれ。
ですが、羽咲ちゃんの人生を大きく変えるターニングポイントは紛れもなく『探索者(あなた)』です。
本シナリオは最初に申し上げた通り、アーティスト「天野月」さんの楽曲に強く影響を受け制作されたオマージュ作品です。
ご本人様、並びに各関係者様方とは何の関係もない事を改めて明記させていただきます。
ので!シナリオとして『販売』するのはなんとな〜く気が引けてしまい『無料公開』という形に致しました。
NPCの立ち絵はオリジナルデザインとなりますのでそちらは有料販売を考えております。
なにぶんこういったシナリオ公開、同人活動のようなものはほとんどしたことが無いので手探りで何とかやらせていただいております。
至らぬ点などございましたら、それとなくご教授いただけますと幸いです。
シナリオ制作:プレセペ星団 柚子(‘ュ’*ズ
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」