だってふたりでしかできないじゃない | ナノ



※R-15くらい
(致しているだけの安本)


ずっと、なんとなくこいつは体温が低いんだろうなと思っていた。
細っこい見た目のせいもあるし、そのドライな性格も、俺にいつも向ける絶対零度の眼差しも、その想像を大いに手伝っていると思う。
けれど今、実際に触れている本好の身体は、汗ばんでどこもかしこも熱を持っていた。
「あっ、ぅ……」
中心から繋ぎ目へそっと指を這わすと、本好は呻いて身体を弱々しくよじった。目許を両手の甲で覆っているので表情はわからないが、乱れた息遣いからなんとなく想像がつく。薄い胸が呼吸のたびに上下して、細い身体の上で揺れる陰影がなんとも艶めかしかった。
本好は泣いていた。それこそ、小さい子供が泣くようなやり方で。
霞のかかった頭の中で、かわいそうに、と思う。そういえば、本好が泣くのを見るのは久しぶりだった。昔はしょっちゅうべそをかいていて、俺や美作が面倒を見てやらないと何もできなかったのに。
目許に置かれた手をゆるく握ってどけると、俺は慰めるように濡れた目尻にやさしく口づけてやった。そのまま舌を這わすと、口の中に塩辛い味が広がる。
流した涙さえ熱を持っているのだということを、俺は初めて知った。
「も……やだ……」
ぐずるように懇願する甘い声。普段とは程遠い姿に、俺は背筋をぞくりとした熱が駆け下りてゆくのを感じる。
一際存在を主張したそれに、本好はああ、と喉の奥で高い声を上げて、ぶるぶる身体を震わせた。同時にきつく締め付けられて、俺は思わず息を詰める。暴力的なまでの快楽に、目の前がちかちかした。
「……、動くぞ」
衝動をなんとか堪え、耳元に低く囁く。
言うが早いか根元まで引き抜いたそれを性急に奥へ運ぶと、本好は声にならない叫びを上げて、咄嗟に俺の背に腕を回した。その動作に、俺は胸がどうしようもなく満たされるのを感じる。
「っ、もとよし、もとよし……っ」
細い腰を掴んで、夢中で動作を繰り返す。きもちいい。もっと。もっと深く。
俺の動きに合わせて、本好はあっあっ、と先程より逼迫した声を上げた。
――終わりが近いのだ、お互いに。
「もとよ……っ、一緒にイって……!」
そう言って本好の勃ち上がったそれを強く握ってやると、本好は一際高い声を上げて身体を仰け反らせた。白く染まった視界の隅で、本好の髪の鮮やかな黒だけが視界に残像のように貼りついて、やがてそれも消えた。



ことを終えた倦怠感に身を預けていると、復活したらしい本好が俺の胸を無遠慮に小突いた。
「……重い、どけ」
一切温度の宿っていない低い声で呟いて、本好はかったるそうに髪を掻き上げる。
本好が事後に途端に不機嫌になるのはいつものことなので、俺は大人しく従って重たい身体を持ち上げた。
「だるい……腰痛い、青臭い、気持ち悪い……最悪」
本好はシーツを身体にかき寄せながら、恨みがましい口調で続ける。……いつもながら、さっきまであんあん言ってたやつと同人物とはとても思えない。
「お前だって同じことになってんじゃねえか」
多少イラついてシーツを剥ぎ取ってやると、本好は例の絶対零度の視線を向けて、
「それが気持ち悪いんだよ」
と即答した。
「……じゃあなんでこんなことすんだよ」
嫌いじゃねぇくせに、と、意趣返しに言ってやると、本好はそんなこともわからないの、という目で俺を見てから、呂律の回らない口で呟いた。



だってふたりでしかできないじゃない
by 首路


致しているときしか甘えられない本好さまとかいいよね、という妄想
20101021

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