無題



 恋は何て甘くて切なくて儚いのだろう。まるでお菓子のようだ。口のなかに広がる食感は果てしなく甘くて心に溢れてくる。しかしすべて食べてしまったときは寂しくなる。
 何をしていてもあの子のことしか頭に浮かばないなんてどうかしている。叶うならばずっと桜乃の傍にいたい。桜乃の笑顔を一人占めしたい。こんなに自分が独占欲が強いなんて桜乃に恋心を抱いていたと分かったときに初めて知った。こんな感情は純粋な桜乃には似合わないから消し去りたいのにもしも桜乃が他の男に笑いかけていたら、もしも他の男の隣を歩いていたら、そう思うだけで心の奥底からモヤモヤした黒いものがわき出てくる。どんだけ桜乃のこと好きなんだよ…俺。

「桜乃はさー、俺のことどれぐらい好き?」
「へ?」
「俺は桜乃こと好きで好きでしょうがないんだけどさ。桜乃は…どう?」

 俺はなんてバカなことを聞いたと思った。みるみるうちにりんごのように真っ赤になっていく桜乃の顔を見たら聞かなくても答えなんて一発で分かった。ああ、俺って愛されてんだ。大好きな彼女に愛されてると感じるときってやっぱりこういう顔を見たときだと俺は思う。

「…俺、桜乃のその顔、好きだぜ。」

 とくに俺のために赤くなってくれているその顔が。


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