テニスログ | ナノ


※第三者視点


丸井君は元気がよくて、みんなの人気者。お菓子が大好きみたいで、お菓子を届けにくる女の子は何人もいる。


「お?くれんの?サンキュー!」


丸井君は笑顔でそのお菓子を受け取る。でも私は、今まで一度も「おいしい」と言っていたのを聞いたことがない。決して不味いわけではないはずなのに…。


「どう?おいしい?」

「うーん…まあまあかな」

「えー!まあまあってなによー!」


お菓子をあげても「まあまあ」としか言わない丸井君に対して文句を言って帰る女子もいる。ある日、私はなぜ「おいしい」と言わないのか聞いてみた。


「ん?そりゃ、桜乃が作ってくれたお菓子のほうがおいしいからに決まってるだろぃ!」


…桜乃?桜乃って…誰…?


「え、えーと…桜乃って、誰?」

「俺の彼女!」


丸井君はにこやかに質問の答えを返してくれた。よく見ると、微かに頬が赤くなっているのが分かる。照れくさそうに笑っている姿はとても幸せそうだった。


「そ、そう。よかったね。私も食べてみたいな。桜乃さんの手作りお菓子」

「ダメだよぃ!桜乃の作ったお菓子は全部俺の!誰にも渡さねぇ!」


びっくりした。丸井君ってこんなこと言ったりするんだ…。悔しいけど、私の負け。いや、最初から戦ってたわけではないけど、これじゃとても敵わない。こんなに丸井君は彼女のことを想っているんだもの。


「そっか…残念。じゃあ、お幸せに」


そう言って私はその場を立ち去った。これ以上いると、泣いちゃいそうだったから。告白したわけでもないのに、私の恋は終わってしまった。桜乃さんって、どんな人なのかなあ…。




彼が想っている彼女



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