桜乃は可愛い。はっきり言ってそこらへんの女より全然いいに決まってる。それは、俺だけが知ってると思ってた。いや、他のやつに知られたくなかった。それもこれも全部桜乃のせいだ。桜乃が俺以外のやつに可愛いところ見せるから。
「さっくのちゃーん!!今日も可愛いにゃ〜」
「おう!桜乃ちゃんじゃねぇか!俺とデートしねぇ?」
「桜乃ちゃん、こんにちは。よかったらこれから僕とお茶でもどうかな?」
……と、このように多くの青学テニス部レギュラーの先輩たちは桜乃が見学にくるのを見計らって、デートだのお茶だのと誘う。俺と桜乃の関係を知っててちょっかいかけてくるからやーな先輩だよね。ていうか、桜乃もちょっとは断りなよ。
「こ、こんにちは。すみません…ここのところ毎日おしかけてしまって……」
「いや。気にすることないよ。僕たちも君を見れて嬉しいし」
「そうだぞ!桜乃ちゃんといっぱいお話したいもん!」
「おう!その通りだぜ!」
「皆さん…ありがとうございます!」
桜乃…お礼を言ってる場合じゃないでしょ。早く俺のところに来てよ。テニス教えてほしいんでしょ?なら、俺が教えてあげる。くれぐれも先輩に教えてもらうようなことは……
「桜乃ちゃん、せっかくだからテニス見てあげるよ?」
…は?ダメに決まってんじゃん。先輩!桜乃の専属コーチは俺なの!俺以外のやつが桜乃に教えるなんてダメ。
「え!?いいんですか!?不二先輩!」
「ああ。もちろんだよ」
ちょっ、桜乃もなに教えてもらおうとしてるわけ!?
「じゃあ、あっちに行こうか。」
「はい」
「ちょっと、待った」
リョーマは我慢できなくなり、桜乃のもとへ急いだ。桜乃を抱き寄せて、先輩を睨みながら言う。
「桜乃に教えるの、俺なんで。余計なことしないでくださいよ」
「え!リョ、リョーマ君!?」
いきなり抱き寄せられた桜乃は、顔は真っ赤になっていて、まるで林檎のようだった。リョーマの腕をほどこうと暴れてもあっさり止められてしまった。
「余計なこととは、侵害だなぁ。ただ僕は、桜乃ちゃんにテニスを教えてあげようとしただけだよ?」
「そ、そうだよ!リョーマ君!」
なに桜乃まで不二先輩の味方になってんの。俺がダメって言ったらダメなの。
「だから、それが余計なことって言ってんスよ。桜乃は俺のっスよ?桜乃にテニスを教えるのは俺の特権なんで」
それだけ言うと、桜乃をお姫様だっこして不二に向かってにやりと笑うと、その場をあとにした。
「あーあ。やられたよ。全く…越前のあの独占欲の強さはどうにもならないね」
不二を含め、他のレギュラーたちもため息をついていた。
∴それは王子様だけの特権
(さっき、先輩たちと仲良さそうにしてたから、お仕置きね)
----------
過去フリー小説