俺は、桜乃を抱きしめる瞬間がたまらなく好きだ。腕に力を入れると壊れてしまいそうで怖い。だから、そっと優しく抱きしめる。そうすると、桜乃も俺の背中に腕を回してくれる。その時、にっこり笑う桜乃は世界中の誰よりも可愛いだろう。
「景吾さん、くすぐったいです」
桜乃の髪を撫でていたら、桜乃はくすぐったそうに笑った。俺はそのまま桜乃にキスをする。優しい、触れるだけのキスを。
「景吾、さん?どうしたんですか?」
「なにがだ?」
「今日はなんだか、優しすぎます」
当たり前だ。今日は初めてお前に出会った日だからな。桜乃に出会って、俺は変わったと言われるようになった。雰囲気が優しくなった、と。たぶん、それは桜乃を見ていると自然と顔が緩んでしまうからだと思う。桜乃といるとホッとする。癒される。これからもずっと傍にいてほしい。
「今日は、な。」
「ふふ。変な景吾さん」
昼時の安らぎの空間