もし誰かに彼女を世界でいちばん愛してるかと言われたら、即答する。「愛してるなんて言葉じゃ足りないくらい愛してる」と。それは紛れもなく事実だ。
俺はあの可愛い桜乃を目の前にすると、自分でも驚くくらい動揺していることが分かる。本当にありえない話だ。この俺様がひとりの女にここまで振り回されるなんて。でも、おかしいくらい愛してしまったんだからしょうがない。
「桜乃、来い」
「はい?」
「ここへ来い」
ここ、とは俺の腕の中のこと。桜乃のためだけに開かれた両腕。この大きな手で小さな彼女を一瞬で覆い隠すことができるだろう。そう、他の男の手に渡らないように。
「どうした。早くしろ」
「は、はい…///」
俺は少し強く桜乃を抱きしめた。桜乃は抵抗することなく、俺の胸に顔を埋めている。それでも本当は顔が真っ赤でどうしようもないくらい恥ずかしがっているに違いない。それを分かっていても抱きしめたいという衝動は襲ってくるのだから仕方がない。もう自分ひとりの力じゃ止められない。どうしようもなく愛しているんだ。
「あ、跡部さん…どうしたんですか…?」
問いかける桜乃に俺はなんでもない、と一言だけ言ってまた少しだけ強く抱きしめた。
∴愛してるだけじゃ足りない
(本当に好きで、好きで、たまらないんだ)
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