「あー!つまんねー!」
この中学生は,立海大2年テニス部2年,切原赤也。
「なんだよ!丸井先輩,自分から誘っておいてドタキャンかよ!ったく…」
ブツブツ文句を言いながら,たった1人で街中を歩いている。
「どわっ!」
「きゃっ!」
前から来た誰かとぶつかってしまった。
「いって…ったく!気ぃつけ…ろ…」
「ご…ごめんなさい!!」
赤也は目を見開いた。今自分の目の前にいる少女は,腰より長い髪の毛でみつあみをほどいた感じのようにふわふわしている。目はまんまるくて大きい。そして,なによりその小動物のような仕草にグッとこない男はいないだろうというほど可愛らしい。
(す…すっげーかわいこちゃん……)
「あ…あの…お怪我はありませんか…?」
(どこの子なんだ!?名前は!?あー!ちくしょう!なにから聞く!?なにを言えばいいんだ!)
「あ…あの…」
「……へ?」
いつの間にか自分ワールドにいっていた赤也はやっと我に返った。
「あの…すみませんでした!お怪我は…ありませんか…?」
「へ!?怪我!?ああ…大丈夫!大丈夫!俺,こう見えて結構丈夫なんスよ!」
「そうですか…よかった…。」
安心しきったように笑った彼女の笑顔は,それはもう可愛くて,赤也は思わず赤面してしまった。
「あ…えっと…あの…えっと…」
「はい?」
(あー!どうすんだ,俺!なんて言えばいいんだよ!なんで緊張してんだ!?)
「あ…あの!」
「はい?」
「お…俺!切原赤也っス!このあと暇だったら一緒にお茶でもどうスか!?」
彼女は一瞬ポカンとしていたが,やがてあの笑顔を見せて
「私は,竜崎桜乃です。ぜひ,お願いします!」
これがはじまりの瞬間