サスケ君が帰ってきた。
この日がくることをどんなに待ち望んでいただろう。
大好きだったサスケ君が、みんなのもとに、私のもとに帰ってきてくれた。
今目の前にはつい先ほど里へ戻ってきたサスケ君がいる。
これは夢じゃない。そう信じたい。
だけど、やっぱり不安もある。次いつ私の前からサスケ君がいなくなってしまうか分からない。
もしかしたら、このまま、また遠くへ行ってしまうんじゃないか、「ありがとう」の言葉だけ言って私の目の前から姿を消してしまうんじゃないかと。
そんなことが頭の中を過ぎる。
「サクラ!」
気が付いたらサスケ君の前から逃げ出していた。
サスケ君は私を追いかける。
もしまたいなくなってしまうんだったら優しい言葉をかけないで、前みたいに「サクラ」って私の名前を呼ばないで、お願い、サスケ君。
「待てよ!サクラ!」
サスケ君に腕を捕まえた。
ここは人通りが少ない。
今も私とサスケ君のふたりだけだ。
サスケ君は私がもう逃げ出さないということを確認すると静かに腕を話した。
その代わりに私の手を握った。
「サクラ…悪かった…今まで、待たせて…ひとりにして…」
それは今まで見たこともないサスケ君の顔だった。
優しいような切ないような。
「ううん…大丈夫…今こうして、帰ってきてくれたんだもの…」
「ここへ来る途中、山中から聞いた。お前、男もつくらず、涙を見せず一人で頑張ってきたんだってな」
「…だってサスケ君も頑張ってるから…私も頑張らないと…」
サスケは言葉が詰まった。
ただ単に復讐をしてきただけのサスケにはサクラの悲しみは分からなかったからだ。
サスケは今さらながらサクラをひとりにしてしまったことを後悔した。
「サクラ…今までよく頑張ったな。これからは、その…俺がいるから…俺が守るから」
サスケはまだ強がって涙を流さず必死に耐えているサクラをそっと抱き締めた。
その瞬間、誰もが長い間見ていないサクラの涙が頬を伝った。
耐えきれなくなった涙
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