今日こそは…そう思った日はちょうどクリスマスの日だった。 グレイ・フルバスターはルーシィ・ハートフィリアと恋人同士になって2年が過ぎようとしていた。 お互いもう結婚を考えてもいいような年ごろだし、現にグレイはもうルーシィと結婚する気満々だった。
グレイの手の中に入っていた小さな四角い箱の中には昨日街へ出かけて店の中に入るまで2時間、選ぶのに3時間もかかった結婚指輪が入っていた。 小さなダイヤがついた綺麗な指輪だった。これならルーシィも喜んでくれるのではないかという期待も込めて計5時間かけて女店員に手伝ってもらいながら選んだグレイの気持ちが全部詰まっている大切なものだった。 結婚したいという気持ちは人一倍にあるのだが、プロポーズの言葉がなかなか思い浮かばない。 それ以前にルーシィが喜ぶ言葉をかけてあげられるかどうか怖いという部分がある。
「…それで私に聞きにきたって訳ね」 「頼むよ!ミラちゃん!もうミラちゃんしか頼れる奴はいないんだよ!」
聞いたところによるとグレイの頭の中ではナツに頼んだらものすごい睨まれて炎をぶつけられるに決まってる、エルザに頼めば「私のルーシィに何を言うつもりなんだ?」とかすごい睨まれそうだしウェンディはそういうの分からなさそうだしロキは何かすっごい恥ずかしい言葉を言われそうだしエルフマンは「漢だ!」とか言って話流されそうだし他の仲間たちはいろいろとダメらしい。 それで一番そういうのを知ってそうで尚且つルーシィにプロポーズすることを祝福してくれそうなミラに頼んだのである。
「んーそうねぇ。ルーシィって甘い言葉に弱いんじゃないかしら?」 「ん、まぁ…そうだろーけど…何かそれって俺っぽくなくないか?もっとこう…本当に一生一緒にいてくれって気持ちがちゃんと伝わるように…」 「ふふ。本当にルーシィが好きなのね」 「へっ?///」
グレイはミラ相手に思いっきりルーシィに告白したことに気付いて赤面した。 ミラはグレイったら可愛いわね、と相変わらず楽しそうに微笑みながらからかうような口調で言った。
「い、いや…えっと…///」 「隠さなくていいわよ。えっとねぇ、もしルーシィだったら何て言われたいかしら?」 「それが分からなくて苦労してるんだけど」 「あら、分からないの?例えばね、グレイはルーシィに告白したときは何て言ったの?」 「は!?な、何でそんなこと…///ふ、普通に好きだって言ったぜ///」 「じゃあ、それがいいのよ」 「え?」 「ルーシィにはあいまいな言葉は一切通用しない。直球に思ってることを全部言えばいいと思うわ」
にこっと笑って言うミラを見てグレイはハッとしたようだった。 そういえばルーシィは態度で表わすより言葉で言ったほうが喜ぶし、それが一番伝わると言っていたことがあった。 それから「好きだ」「愛してる」と恥ずかしいからとたまに言うことがあったが、ルーシィは顔を真っ赤にして本当に嬉しそうに微笑んだのだ。 グレイの記憶の中にはその時のルーシィの顔は忘れたことはなかった。
「ルーシィ!」
ルーシィとの待ち合わせにはまだ少し時間があったが、グレイはその場から駆けだした。 向かう先はもちろん愛しい恋人のところ。
「ふふ、本当にあの二人可愛いわね」
ミラの言葉だけがその場に残った。 グレイの頭にはもう何も入っていない。プロポーズのあの言葉だけ、ルーシィのことだけが脳内に浮かんでいる。 夢中で走ってルーシィの家へ向かい、バタンと音をたててドアを開けると目を丸くして驚いているルーシィに思い切り抱きついた。 強く、強く自分の両腕に納めたのでルーシィは「グ…グレイ…」と弱々しく呟いた。
「わ、悪い!」 「ごほっ、ごほっ、も、もう…っ。どうしたの?そんなに急いで…」 「ルーシィ…!」
グレイはもう一度ルーシィを抱きしめ、今度はその唇にキスを贈った。 ただ触れるだけのキスだったが、想いが伝わるのは十分でとても熱いキスだった。
「ルーシィ…好きだ、愛してる」 「ぐ、グレイ…///あ、あたしも…愛し、てる…///」
ルーシィからの「愛してる」に満足したグレイはニッと笑って、ルーシィを抱きしめたまま、もう一度愛してると言った。 そして小箱から指輪を取り出してルーシィの左手薬指にそっとはめた。
「こ、これって…」 「ああ…ルーシィ…」
グレイを真っすぐに見上げるルーシィはもうグレイが何を言いたいのか分かっているだろう。 澄んだ綺麗な瞳を輝かせながらルーシィはうっとりとグレイを眺め、どうかあの言葉をください、と切実に願った。 グレイは今言わずにいつ言うんだとルーシィに今思っているすべてを伝えるべく大きく深呼吸をした。
「俺と結婚してくれ!」
二人の願いが同時にクリスマスによって叶えられた瞬間だった。
ウエディング・ラヴ・ストーリー (聖なる夜にサンタさんから素敵なプレゼントを貰った)
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