先ほどからずっとこの状態。ギルドの奥のカウンターでずっとそっぽを向いているルーシィ。
そして、その隣に腰掛け、ルーシィの顔を覗いてる俺。
「どうしたんだ?」とか「何があった?」とか聞いても「別に」と返ってくるだけ。
ルーシィが不機嫌なのはナツ絡みや金がない、ということが多いが、今はできるだけ俺が傍についてるからナツが近づくこともない。家賃もこの間払ってって言ってたし…したがって、この二つが原因ではなさそうだ。
それに、もう一つ気になることがある。ただ不機嫌とか怒ってるとかではなくて、泣きそうな顔をしていた。


「グレイ、ルーシィに何をしたんだ。答えろ」
「うわあ!え、エルザ!」


ルーシィには聞こえないように、と小さめの声で話しかけてきたエルザ。
「ルーシィ」という俺の彼女の名が出てきたことにピクリと体が反応して、パッとエルザの方を向いたら、後ろにルーシィがいるため吹き飛ばない程度に殴られた。
エルザの顔はどこからどう見ても怒っていた。


「ルーシィがどうしたって?」


殴られたところをさすりながらエルザに聞き返した。
そしたらエルザはもっと怖い顔をして思い切り睨んできた。


「貴様…私のルーシィに何をした?最近ルーシィの様子がおかしい。原因はお前しかあり得ないだろう」


ルーシィの様子がおかしいっていうのはなんとなく気づいていた。けど、その原因が俺だっていうのは今はじめて知った。俺がルーシィに何をしたんだ…?
もしかして、あれか。この間次の日仕事があるってのに無理やり抱いたからか?いや、でも仕事にあまり支障なかったし、だいたいの敵は俺が倒したし…報酬はきっちりもらえたし…。じゃあ、あれか。眠いと言ったルーシィにキスしまくってそのままヤったからか?いや、でも次の日ちゃんと謝って許してもらえたし…。
あーもう。思いつかねぇ。


「…思い当たることがねぇ…」
「お前…やったことを忘れてしまったのか!?お前はそういう人間だったのか!グレイ…今からお前を死刑に…」
「うわあ!エルザ!やめてくれ!お、俺だって必死に思いだそうと…」

「もう!いい加減にしてよ!」


シーン…そこの場所だけ一瞬にして静まり返った。
ルーシィが俺たちを見ている。いや、睨んでいる。俺とエルザはポカーンとしたまましばらく固まっていた。
やっと意識が戻ったところでもう一度ルーシィの方を見ると…ルーシィの頬には涙が伝っていた。


「んなっ!ルーシィ!どうしたんだ!?」
「る、ルーシィ!まさかグレイに…」


あわあわと俺は慌ててルーシィに駆け寄り、頬を包んだ。


「グレ…イが…ジュビア…と、一緒に…それで、グレイ…が顔赤く…してて…ひっく…あたし…それ見て…」


ルーシィから出た言葉は俺にとってはとても意外だった。
それじゃあまるっきりヤキモチ妬いてますって言ってるようなもんじゃねぇか。
今だ鼻水をすすり、涙が溢れ出ているルーシィを俺は可愛いと思った。


「ルーシィ…」


俺はルーシィを抱きしめた。
そしたらルーシィは驚いて目をまんまるくして俺を見上げるもんだから、自然と笑みがこぼれた。


「勘違い…するなよ。あれはルーシィのことを言われたんだ。だから俺…」


自分も顔が赤くなっているということに気付いた。ルーシィは丸かった目をもっと丸くして、また泣き始めた。


「お、おい!ルーシィ!?」
「あ…りがとう…」
「…へ?」


ルーシィはいったん俺の胸に顔を埋め、それからもう一度俺を見上げながら大好き、と呟いた。
その顔があまりにも可愛くて俺は我慢の限界とばかりにルーシィを強く抱きしめた。
ルーシィも俺の背中に腕を回してくれた。


「グレイ…今日…その…グレイの家に泊まっても、いい…?」
「る、ルーシィ…///当たり前じゃねぇか///」


ルーシィのヤキモチから始まった甘い時間。
今日はいつもより可愛いルーシィが見れたし、俺の家に泊まるという約束もできたし、なんだか今日は最高な気分だ。
先ほどからこの現場を目撃していたエルザは怒りゲージMAXだったが、そんなことはもうどうでもいい。
とりあえず、さっさと仕事を済ませてルーシィと一緒に家へ帰りたい。
それから、明日はちょっと早く起きてルーシィにキスしてまた一日を始めたい。
そんなことを密かに思いながら今だ強くルーシィを抱きしめていた。




ラブリーガールの誘惑
(たまには素直になってみるのもいいかな)


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相互記念小説百倉さんへ
大変遅くなってしまって申し訳ございません!
ルーシィ嫉妬話というリクを頂いたとき、
ルーシィが嫉妬して涙を流す→ルーシィのことを可愛いと思って我慢できなくなり、抱き締める
という意図が思い浮かびまして…このようなお話になってしまいました。
気に入っていただけると嬉しいです。


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