きっとね、お姫様には王子様が必要なのよ
「いのー聞いて!サスケ君ったらねー!」
…また始まった。もうそろそろいい加減にしてほしい。最近度々サクラは私のところへやってきてはサスケ君がどうのこうのと愚痴愚痴言う。しかも、実際はただ単に自分の彼氏について惚気を言っているだけ。自分が惚気を言っているとはこれっぽっちも思っていないサクラは私のことさえ気にもせずからっぽになるまで喋って行く。そしてメソメソとしてきたところでタイミングよくインターフォンがなって王子様が現れる。王子様は泣いているピンク頭のお姫様に優しくキスをして大人しくさせたところで連れて帰るというのがいつものお決まり。一体今日はどれくらい付き合わされるんだろう。長期任務の帰りで疲れてるってのにこのどうしようもないピンクは全く世話がやける。
・・・
一時間が経過。まだインターフォンはならない。どうやら今回はサクラが患者さんと楽しそうに会話してたのをサスケ君に見つかり、まだ仕事中だって言うのに家に帰されたっぷりとお仕置きを受けてその翌日腰が痛くてベッドから起き上がれなくて仕事も休んだそうだ。それってどう考えてもサスケ君のただのヤキモチなのに、それをどう勘違いしたのか「サスケ君ひどい!私だって仕事頑張ってるのに。トロいからって家に連れて帰らなくたって…!綱手様には呆れられたし!」だって。いやいや、サスケ君はサクラがトロいとかじゃなくただ単にサクラがその患者さんの傍にいることが許せなかったんでしょ。綱手様はサクラに呆れたんじゃなくて、サスケ君に呆れたんでしょうが。いい加減気付きなさいよ、この鈍感。
「私…少し家を出ようかな」 「…え!?ちょ、サクラ!それだけはやめなさい!!」
今度は何を言い出すのよ、この子は。サクラが家を出たりなんかしたらきっとサスケ君は毎日不機嫌で周りにもとばっちりがくるでしょうが。それに万が一そうでなかったとしても魂抜けて屍になっちゃうに決まってる。
「どうしてよ、いの。私、今度という今度は本気なんだから!」 「は、早まっちゃダメよ!サスケ君はサクラなしでは生きていけないんだから!」 「そんなことあるわけないじゃない!だって、最近いつも不機嫌だし、私に意地悪してばかり。私…サスケ君に嫌われちゃってるんだわ!」
いやいやいや。それ、ただの勘違いだから。サスケ君はサクラのこと、めっちゃくちゃ好きだから。だから、サクラが家を出るのはすごくまずいと思うよ、うん。お願いだから私にまでとばっちりがくるようなことだけはやめてね。今すごく疲れてるから。とりあえず今サクラは帰したほうがいいのかな。でも、サスケ君もうサクラを探しに来ちゃってたりして。そしたら入れちがいになっちゃうから、ますますサクラが勘違いをして…めんどくさいことになるかもしれないし…。でももう私の手には負えないし…。
「…おい」
あれ。今の声は。もしかして、もしかして。もう来ちゃったの?ていうか今のタイミング最悪じゃない?もしかして今の話全部聞かれた?まさかね。はは。間違いであってほしい。私のためにも!
「…どういうことだ」
あーもうばっちり聞いちゃってたんですね。って、すごい怖い顔してる。あ、サクラが泣いてるの見て眉間にしわ寄った。サクラの潤んだ瞳見て照れてる。もしかして私が思ってるより状況全然浅い?だとしたら今のうちに早く解決しておきたいんだけど。サクラが何か言う前に。
「…サスケ君。私、サスケ君に嫌われちゃったのかな。だとしたらもう家出るね。ごめんね、迷惑ばかりかけて」 「ちょ、サクラ…!?」
何言ってんの!今そんなこと言ったらサスケ君…あ。
「ふぁ…あ…ちょ、サス…」 「お前…本気で言ってんのか…?」 「ん…ん、んぅ…」 「本気で俺から離れたいなんて思ってるのかよ。俺はお前を迷惑だなんて思ったこと一度もないぜ?」 「ん、あ、あ…サス…ケ…君…」
私がいるのもそっちのけでイチャイチャして…このバカップル。さっきまでの喧嘩はどこにいったのよ。ここ私の家なんだけど。 全くこのどうしようもないバカップルはこのあと10分くらいキスを続けてやっと私がいたということに気付きサスケ君はともかくサクラは恥ずかしさから顔が真っ赤になって気を失ってしまった。そんなサクラに性懲りもなくサスケ君はもう一度キスを贈り、私に向かって「悪かった」と言ってサクラを横抱きにし、家を出て行った。その姿が本当の王子様みたいで思わず目が釘付けになってしまって、気づいたらもう二人はいなくなっていた。全く人騒がせなバカップルだ。憎めないけど。
あとがき 今回のいちばんの被害者はいのちゃんです。いのちゃんごめん…!でもいのちゃんはずっとサクラの相談役やってそう。時には仲介役も。
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