惚れ薬にはご注意を
「…おい。なんなんだ」
棗が教室に駆け付けたときはすでに遅かった。蜜柑は普段より増して色っぽい顔をして翼に抱きついていた。事情は、今から約10分前、のの子とアンナが作った試作品の薬を蛍が強制的に飲ませ、蜜柑がこんなになったのだと言う。
「…何で蜜柑が影野郎に抱きついてんだよ」 「え、えっと…あのね…試作品の薬は…惚れ薬だったの…」 「「「はぁ!!!???」」
蛍も含め、誰も知らなかったみたいだった。その惚れ薬とは飲んでから最初に見た異性の人に恋をする、という。
「…いつ戻るんだよ」
棗は蜜柑にべったりくっつかれている翼を睨みながら言った。翼は殺さないで、お願いします、棗様と必死に神に祈った。
「えっと…たぶんあと2時間もすれば戻ると思うんだけど…」 「けど?」 「お互いが嫌いな者同士でなければ今日1日中戻らないケースもあるの…」 「「はぁ!!!???」」
本日2回目のみんなで声を合わせての言葉です。それもそのはず。みんなも知ってのとおり、翼が蜜柑のことを嫌いなはずはない。それは棗も分かっていることだ。それでもやっぱり蜜柑がこのまま翼にべったりくっついているのは嫌だった。
「…分かった。おとなしく待っててやる。そのかわり1日経ったら覚悟してろよ…」
棗はそれだけ言い残し、教室を出て行った。ルカに見張り役を頼んで。
「え…まじ?俺、本当に殺されちゃうわけ?」 「当たり前じゃない。私の蜜柑に何してくれてんのよ」 「え…いやだって。これ蛍姉さんが飲ませたんでしょ?」 「問答無用」 「きゃー!!!」
教室中に翼の叫び声が響き渡った。次の日、棗と蛍にボコボコにされた翼を発見し、蜜柑は昨日の出来事を全く覚えていなかった。だけど棗は深く傷ついたため、その日1日中蜜柑を鳴かせていた…。
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