周りはみんな好敵手


※流架視点




「蜜柑。あなたは世界でいちばん私が好きなのよね?」
「蜜柑。お前は宇宙でいちばん俺が好きなんだよな?」


さっきから佐倉のいちばんの人は誰か、と言い争っている2人。俺の親友の棗と佐倉の親友の今井。毎日のように言い合っているからクラスのみんなは群がることはなくなった。けど、俺は群がるもなにもいつも棗と一緒にいるから自然と現場を目撃してしまうことになる。それも佐倉は超がつくほどの天然で今だに2人が何でもめているのか、分からないみたいだ。正直…疲れる。


「ウチは2人とも好きやよ?」
「蜜柑。好きな人っていうのはね。いずれは1人を決めなければならないのよ?」
「今すぐここで誰が好きかはっきりさせろ。ま、言われなくても答えは分かっているがな」
「えっと……」


あ。佐倉が迷いはじめた。いつもああやって頭を抱えて悩んでいるけど、結局は何も言えないまま終わってしまう。


「うーん…」
「何を悩んでいるの?蜜柑。私だって言えばいいのよ」
「何言ってんだ。俺に決まってんだろ。蜜柑、俺だって言え」


どちらともピリピリしながら佐倉の答えを待っているんだ。そりゃ佐倉のいちばんは誰か気にならないって言われたら嘘になるけど、今は佐倉が言うようにみんな好きっていうのじゃダメなのかな?いずれは棗は佐倉とともに生きて行くだろうし今井は…


(意地でも佐倉の傍を離れないかもしれない!!)


今すっごく恐ろしいことが思い浮かんだ。もうこのことを考えるのは止そう。それに、今のこの光景を見ているのは面白いし。棗もだいぶ明るくなって楽しそう。


「棗君。いい加減私たちの間に入ってこないでくれるかしら?」
「てめぇが俺たちの間に入ってきたんだろうが」
「いいえ。私と蜜柑は見えない糸で結ばれているわ。誰よりも絆は深いのよ」
「それは友情の問題だろうが。俺たちは愛情の問題だ」
「…良い度胸してるわね」
「そっちこそ」


そうこうしているうちに佐倉が遠く離れていた俺のところへ来た。そしてきょとんとした顔をして


「あの2人さっきから何言ってるん?2人があんなに仲良くなってウチも安心やわ」


違うよ、佐倉。あの2人は佐倉の取り合いをしているんだよ。俺も佐倉を好きな子の中のひとりだけどね。俺はこの笑顔を見られれば良いんだ。あの2人も、きっとそう思っているはずだよ。