「来週はクリスマスだからね。せっかくだからみんなでパーティーをしよう。空けとくんだよ」


竜崎先生のこの一言で青学テニス部はレギュラー陣+堀尾・カツオ・カチローの1年生3人トリオでクリスマスパーティーをすることになった。
皆とくに予定がなかったため、おもに強制参加だったためメンバー全員の参加が決定した。
皆今からワイワイ騒いでいるものもいればリョーマのように興味がなさそうにしているものもいた。騒いでるものが大半だったが。


「あ、そうだ。家の桜乃ちゃんも参加させてやってほしいんだが…いいかね?」


ぴたっ

竜崎先生のこの言葉に今まで騒いでいたものもつまらなそうにそっぽを向いていたものも皆一斉に動きを止め、竜崎先生の方を向いた。
いきなりメンバー全員に注目されぎょっとした竜崎先生だが、よくよく見るとメンバー全員の目がきらきらしていて顔に表さないよう必死にしているが嬉しそうなのダダ漏れというなんともおかしな光景を見て思わず笑いが吹き出しそうになった。
テニス部メンバーが自分の愛孫を大事にしてくれていることは知っていたので今さらつっこむところはないが、こうも面白い反応をされると普段勝つために真剣な顔になってテニスをしている連中が可愛いと思えてくる。


「当日楽しみにしておいで。可愛い桜乃ちゃんが見れるよ」


あ、また。ぴくっと全員の肩が反応した。きっと早く来週になれとか心の中で言ってる奴もいるだろう。あっちには桜乃ちゃんを妄想しているのがダダ漏れの奴もいる。
これは桜乃ちゃんを連れてくるのは危険かもしれない…と竜崎先生は頭を抱えた。





当日はリョーマと桃城が桜乃を家まで迎えに行くことになっていた。
つい先日桜乃の家まで誰が迎えに行くのかとメンバー全員で大騒ぎになり、じゃんけん大会が開催されて勝者のこの二人が桜乃を迎えに行ける権利を手にした。
本当は一人のはずだったのだが、決勝戦でこの二人がずっとあいこばかりでなかなか勝敗が決まらないため、仕方なく二人になったのだ。
当然面白くないリョーマと桃城は今となってはそんなことはどうでもよくとりあえず早く可愛い桜乃の姿を見たいと胸を焦がらせていた。


「おっ、着いたぜ。ここが桜乃ちゃんの家か?」
「そうっスね。ちょうど時間ピッタリみたいっス。んじゃ、ピンポン押しますよ」


インターフォンが鳴り響き、ドアが開いて中から見知らぬ女の子が出てきた。


「お待たせしました!リョーマ君、桃城先輩!」


しかし声だけは二人ともよく知っているあの女の子のものだった。二人はハッと息をのんだ。そう。その女の子は間違いなくあの竜崎桜乃だった。
なぜ分からなかったのかと言うと、彼女は赤と白色のワンピースで腰には茶色のベルトがしている、いわゆるサンタさんの服で身を包み髪型はポニーテールで少しウェーブがかかっていた。
いつも可愛い彼女がさらに可愛さを増して二人は一言も発することができず、しばらくその場で固まっていた。


「あ、あの…?」


3分後一向に動かないリョーマと桃城を心配して桜乃は二人に近づき、顔を覗かせた。
それが上目使いになっていたことで二人は我に帰り、思わず赤面してしまった顔を隠しながら「何でもない」となんとかごまかした。
桜乃は「そうですか?」と言ってにこにこと二人を見つめた。桜乃が鈍くて良かったのやら悪かったのやら頭を悩ませる二人が見られた。





「やぁ、遅かったね3人とも。何をしていたのかな?」


くすくすとすべて見透かしているように笑う不二に出迎えられ、リョーマと桃城と桜乃はからむら寿司にたどりついた。
中へ入るともうすでに皆来ていてごちゃごちゃと盛り上がっていた。
未成年者の飲酒は禁止なのでジュースだけしか飲んでいないはずなのだが、なぜか酔っ払いがたくさんいると思えた。

改めて店に入りなおし、席に座った。
もちろん桜乃がどこに座るとかでケンカになったが、結局ジュース一気飲み対決に勝ったリョーマと桃城の間に座ることになった。


「おまたせしましたー!」

「「「…!!!!」」」


そしてリョーマは右隣を桃城は左隣を開け先に座り、桜乃の分と自分の分のジュースを用意して睨み合いながら席を立っていた桜乃を待っていた。
そこに先ほどの可愛いサンタの格好に似合った帽子を被り、大きな袋を持った桜乃が現れた。
その格好はまさに可愛いサンタさんそのもので本当に思春期の僕らにはヤバすぎる姿だよ、桜乃ちゃんとここにいる誰もが思ったであろう。


「皆さんにプレゼントです!え、えっと…気に入ってもらえるか分かりませんが…いつもお疲れ様です!また来年も頑張ってくださいね!」


今日一番の桜乃の笑顔を見れてそれだけでいいと思っていたメンバーはさらに桜乃からの心のこもった贈り物をもらって浮かれているものは何人もいる。
素敵なクリスマスを前に素敵なプレゼントをもらったメンバーたちはとりあえず桜乃の取り合いは一時休戦し、皆楽しくクリスマス会を楽しんでいることだろう。



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