今手に持っているデジカメには可愛くて愛しい彼女が写っている。その姿を見ていると何だか心が和む、というか顔が自然に緩んでしまう。
今日は桜乃が俺の彼女になって初めてのデート。ガチガチで緊張丸出しの彼女は本当に可愛くて、他の男には見せたくないくらいだった。
我ながらこんなにも独占欲が強かったのか、と自分で自分に苦笑いしてしまう。

デジカメに写っている彼女はいつにも増してきらきらしていて、こんなにも美しすぎる。
この笑顔、姿すべてが俺の物だということに幸せだなと思う。
桜乃に好意を寄せている奴はこの世には数えきれないほどいるだろう。その中で俺を選んでくれた、俺を好きと言ってくれた。
俺も桜乃を離すつもりはないし、今だって神奈川と東京で桜乃不足が恐ろしいほど溜まっている。
だから、いつまでも桜乃を抱きしめていたくなって、たまらないんだ。

情けない、と深くため息をついて、携帯を取った。





「ゆ、幸村さん!」
「桜乃ちゃん…ごめんね、いきなり押しかけちゃって…」
「いえ、いいんです。私も…幸村さんに会いたかった、ので…」


今日のデートだけじゃ足りず、電話を切るとすぐに上着を持って少し遠い東京まで急いだ。
電車の中でも彼女の姿が頭から離れず、彼女を抱きしめたときの感覚まで体中に溢れ出てきた。

家の近くの公園で待ってて、とだけ残した短い電話。
その場所へ着くとブランコに乗って俯きながら待っている彼女を見つけ思い切り抱き締めた。
慌てふためく彼女が可愛くて、可愛くて、何回言ってもまだ足りないほど可愛くて、俺の大切な彼女であって。誰にも渡したくない存在であって。
真っ赤になった彼女をそっと腕から解放し、向き合った。


「ゆ、幸村さん…」
「しっ、静かに。キスは目を瞑ってするものだよ?」
「はっ、はい…っ」


桜乃が目を瞑ったことを合図にゆっくりと唇が重なった。
ああ、これが本物。これが俺の大好きな桜乃の唇。やっぱり写真だけじゃ、デート一回だけじゃ物足りない。
本当は24時間365日抱きあって、キスして、それ以上のことだってしたいのに。
神奈川と東京という距離がそれを許してはくれない。


「…桜乃…好き…だ」
「幸村さん…わ、たしも…好き、です…///」
「名前…呼んでよ。俺の、名前」
「精市、さん」
「うん、ありがとう。桜乃、愛してる」


その一瞬の甘いキスはまるで魔法のように俺を支配していった。
頭では帰らなければならない、と分かっているのに体は全く言うことを聞かなくて、やっと離れたのはそれから一時間後だった。
帰り間際に初めての桜乃からのキスを贈られた。それが嬉しくて二ヤけた顔が元に戻らなかった。








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