「リョーマ君っ!」


休憩中、いつものようにポンタを口に含んでいる頃、聞きなれている綺麗なソプラノの声が聞こえてきた。
そこに顔を傾けなくても誰だかすぐに分かる声。
同級生で竜崎先生の孫、竜崎桜乃。
テニスが好きでいつもこうやって青学テニス部へ見学に来ているため、先輩たちとも顔見知り。
ていうか、先輩たちは竜崎のことが好きで好きでたまらないみたいなんだけどね。本人は全然気づいてないみたいだけど。
竜崎はいろいろ差し入れを持ってきてくれたり、試合の日は応援に来てくれたりする。
テニス部へ、じゃなくてどうせなら俺に会いにきてくれれば良いのに、なんて。


「竜ざ…「よぉ!桜乃ちゃん、よく来たな!」
「わっ!も、桃先輩!?こ、こんにちは!」
「わざわざ応援来てくれたのか?さっすが桜乃ちゃん、やっさしいねぇー」


俺が竜崎へ歩み寄ろうとした瞬間、横から割って入ってきたのは桃先輩。
この先輩も竜崎を狙っている先輩の一人。
明るくてフレンドリーな桃先輩はある意味一番厄介かもしれない。
竜崎も竜崎で案外桃先輩と仲良いし、壁を感じないっていうか…桃先輩には素直に笑顔を向けてるしまるで兄妹みたいに自然だ。
それに比べて俺は、竜崎の表情のうち半分は緊張したりおどおどした顔しか見てないし桃先輩みたいにいつも俺に笑顔を向けてくれるわけではない。
最近の悩み事はそれだ。


「…桃先輩、もうそろそろ休憩終わるっスよ。戻った方が良いんじゃないスか?」
「そういうお前こそ、今日は不二先輩と打ってもらうんだろ?早く行かねぇと不二先輩取られちゃうぜ」


不二先輩なんかどうでもいいんだよ。桃先輩は相変わらず引こうとしない。
俺だって負けるわけにはいかない。今この場を桃先輩に譲ったりなんかしたら、竜崎がどんなめに合わされるか分かったもんじゃない。
油断も隙もないこの先輩の前でこっちも隙をつくるわけにはいかない。


「…竜崎。そういえば、おば…じゃなくて竜崎先生が呼んでたよ。行ったほうがいいんじゃない?」
「え!?本当?ありがとう、リョーマ君!行ってくるね!」


竜崎はすぐさまたたたっと駆けて行った。そこに残されたのは俺と桃先輩の二人だけ。


「…ばあさんが呼んでるだなんて、嘘だろ?嘘はいけねーな、いけねーよ」
「…別に。桃先輩には関係ないッス。それよりも俺の邪魔、しないでくれませんか?」
「はぁ?お前が俺の邪魔してんだろ。せーっかく桜乃ちゃんと二人っきりになれるチャンスだったのによー」


がっくりと肩を落とす素振りを見せる桃先輩は相変わらずムカつく。
それはこっちのセリフだし、竜崎は俺のものだし、桃先輩にはやらないし、と次々といろいろな言葉が浮き出てきたけどそれを全部飲みこんでただ桃先輩を睨んでいることに決めた。
そのほうが言葉よりもよっぽど伝わると思ったから。


「おーこえーなぁ。そんな睨むなって。睨んでも俺は引く気ねーぜ」
「…相変わらずムカつく」
「…先輩に対してそんな態度していいのか?」


案の定俺の気持ちは100パーセント桃先輩に伝わったみたいだ。
ここからは真剣勝負。どちらが竜崎の心を奪えるかの一騎討ち。負けたほうは潔く身を引く、それがルール。
さて、竜崎はどっちに心を奪われるのか。




―波乱の幕開け








あとがき
レナさん、お待たせ致しました。
越前VS桃城で幕開けの最初のお話にしてみました。でも、ちゃんと惚気も入っている…と思います。
ダメ文で申し訳ないです。お持ち帰りしていただけると、嬉しいです。
それでは、リクエストありがとうございました!



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