「あの子…美味しそう…」


たった今俺の親友が変態発言をしたのを俺は確かに聞いてしまった。いや、聞き逃したほうがよかったのかもしれない。
「あの子」とはおそらく前方にいる長いみつあみの女の子のことだろう。
初めて会う子に対していきなりセクハラ発言をするのもどうかと思うが、この考えがむちゃくちゃなコイツのことだからありうる、と切り替えてコイツが真っすぐあの子のもとへ駆けて行きそうになるのをどうやって止めるか考えることにした。


「お、おい。ブン太…」


俺はとっさに隣にいる親友に声をかけ…ようとした。が、隣にいたはずの親友はなぜか前方のみつあみの少女のところへいるではないか、と思った杏やもうすでに声をかけていて、少し遠慮気味の少女を無理やり喫茶店に連れ込んでいるという状態になっていた。
しょうがないから俺も同じ喫茶店に入って少し離れた席に座り、コーヒーを一杯頼んだ。
10分後、とくにアイツは怪しげな行動をとることもなく楽しそうにあの子との会話にふけっていた。
二杯目のコーヒーを頼んで口に含み、まだ10分経ったくらいじゃ安心できないとこれまでの経験で思い知らされているので俺は席から立つことはなかった。


「…はあ!?あ、アイツ…!」


あろうことかそのさらに何秒も経たないころブン太は急に席を立ったと思ったら少女の隣に腰掛け肩を抱いている。
おいおいおい、それは犯罪だろ。てか手どけろよ!必死で心の中で叫んでみてもアイツには何一つ聞こえることはなかった。
それどころかどんどん行動はエスカレートしていくばかり。あ、ヤバい。アイツキスする体制に入ってる。ここ店ん中だぞ。じゃなくて、刑務所行くようなマネはやめろ!
ああ…!アイツ本当にキスしやがった。しかも女の子顔真っ赤になってるし。
こりゃもう刑務所行き決定だな。大丈夫だ、ブン太。ちゃんと「そんな奴ではなかったと思う」と言っておいてやるよ。でも、決して出てくるまで待つなんてことはしないからな。お前はやってはいけないことをしたんだ。しかもあんな可愛い子に…!刑務所入って二度と出てくんな。


「…すみません。お勘定お願いします」


俺から見たらただのブン太のセクハラ行為にしか見えないが、他から見たらどこからどう見てもバカップルにしか見えない可愛い少女と親友を置いて俺は店を出た。




ピンク色ご馳走様でした



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