「こんにちは!」


今日は桜乃が立海に見学にきた。
俺の彼女である桜乃は先輩たちからも気に入られていて、今じゃ立海テニス部のお姫様。
俺だけの桜乃なのにな。


「あ!丸井先輩!昨日は、その…ありがとうございました!///」


…は?なんで?
何で俺よりも先に丸井先輩なんだ?
俺のところに一目散に来て、あの可愛い笑顔を見せてくれるかと思ったら、一番最初に桜乃の笑顔を見たのは、なぜか丸井先輩だった。


「おう!桜乃!いいって、いいって!それで、渡したか?」
「それが…まだなんです…。今日渡すつもりです…」
「頑張れよぃ!桜乃ならできるって!」
「ありがとうございます!」


渡す?渡すって何を?ていうか、昨日桜乃と丸井先輩の間に何があったんだ…?
俺の頭の中ははてなマークでいっぱいだった。


「さ、桜乃…、昨日って…何のこと…?」
「あ、昨日はちょっと…」


桜乃は少し顔を赤くして微笑みながら、答えた。それはいつも俺しか見れない貴重な笑顔だった。
それなのに今は丸井先輩の目の前だというのに、桜乃は構わず笑顔を見せている。
せっかく俺一人だけの秘密だったのに、そんな密かな宝物も一瞬で奪われたような快感が俺を襲った。


「桜乃、言え。昨日丸井先輩と何があったんだ?」
「え、で、でも…」
「いいから言え!」


強引にでも聞き出そうとした。
まさか俺から丸井先輩に変わったなんて、これっぽっちも思っていない。
桜乃を信じてる。
けど、やっぱりすっごく気になる。


「ま、丸井先輩…」
「んー…いいんじゃねぇの?」


なぜか桜乃は丸井先輩に同意を求める。
その行動にすごく腹が立ったが、それで桜乃が話し始めたから、この気持ちを必死に殺した。


「き、今日は…何の日だか…覚えていますか…?」


…へ?今日?何の日だっけ…?今日が何日なのかも分からなかった。


「え、えっと…桜乃…」
「今日はお前の誕生日だろぃ」


誕生日…?
丸井先輩の言葉にハッとした。てことは、今日は9月25日か!


「あ!」
「…やっと思い出したのかよぃ」


世話が焼けるぜぃ、と言って丸井先輩はコートへ入っていった。


「あ、あの…」
「あ、ああ…」


桜乃の言い分はこうだった。
丸井先輩にお願いして、俺のプレゼントを買いに行った、と。
俺には今日渡すつもりだったが、部活が終わるまで内緒にしたくて、黙っていたらしい。


「大したものではありませんが…丸井先輩が赤也さんはこういうのが好きだと…あの…よかったら、受け取ってください!」


桜乃は顔を真っ赤にしてプレゼントをくれた。
大したものじゃないなんて、そんなことありえねぇ。
桜乃が俺のために一生懸命選んでくれたものだ。
俺が気に入らないわけがない。
丸井先輩が絡んでるってことは、ちょっとムカつくけど…可愛い桜乃が見れたし、今回はよしとしよう。


「サンキュー桜乃!開けていいか?」
「え!?ダメです!お家に帰ってから開けてください!!」
「えー!いいじゃん。ここで。」
「だ、ダメです!」
「ちぇっ」


桜乃がそこまで言うから家に帰ってから開けるとしよう。
でも何が入っているんだろう…?
丸井先輩と一緒に選んだって…変なものじゃなだろうな…?


「お?おお!すっげー!」


家に帰って開けてみると、中には赤色のリストバンドが入っていた。
しかも、「A.K」とイニシャル入りだ。
それと、桜乃からの手紙がも入っていた。


赤也さんへ

お誕生日おめでとうございます!
赤也さんが生まれてきてくれて、とっても嬉しいです。
私と出会ってくれて、ありがとうございます!
赤色はヒーローの色、いつも私を助けてくれる赤也さんにはピッタリだと思います。
気に入っていただければ、とても嬉しいです…///
そ、それから…つ、次会ったときに…楽しみにしててくださいね///

桜乃より


桜乃は本当可愛すぎる…やべ、顔が緩む…次会ったときってなんだ…?
はてなを浮かべながらも今日は一日幸せだった、と眠りについた。





「桜乃!」
「あああああ赤也さん!」
「ん?どうした?」
「い、いえ///」


そして、次の日の桜乃とのデートでは、会った瞬間桜乃は顔を赤くして俯いてしまった。
あの手紙のことと関係あるのだろうか。


「桜乃、プレゼントありがとーな!えっと…手紙のことなんだけど…」
「へ!!て、手紙!?」


手紙のことを話すと桜乃は目を見開いて驚いた。


「あの楽しみにしててね、って何のことだ?」
「え、えっと…じゃあ、目瞑ってください…」


俺は言われた通り目を瞑った。
そしたら、頬に柔らかい感触がした。
それが、桜乃の唇だと分かるのに、時間はかからなかった。


「へっ!?さ、桜乃!?」
「改めて…お誕生日おめでとうございます…///」


桜乃の顔が真っ赤になっているのは、いつものことで、俺まで顔が赤くなっているのが自分でも分かった。


「さ、サンキュー///愛してるぜ、桜乃」


今年は最高の誕生日を迎えた。
それは、桜乃がいるからであって、来年も再来年もずっと桜乃に祝ってほしい。
俺、生まれてきてよかった!








あとがき
ずいぶん前に書いたお話です。赤也君、誕生日に間に合わなくてごめんよ…。
桜乃ちゃんに十分慰めてもらってね(笑)



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