桜乃と結婚してから、充実した毎日を送っている。
食事の支度なんかメイドに任せておけば良いものを桜乃は自分で作りたいと言って聞かない。

「旦那様の食事を用意するのは妻の仕事です」

なんて可愛いこと言われちゃやめろなんて言えるわけがねぇし、何より桜乃の料理はそこらへんの一流コックより美味い。
庶民的な食べ物は口に合わないと思っていたが、こういうのは悪くない。
妻の愛情入りのこれ以上ない豪華な食事を食べるのは旦那である俺の仕事だ。
これだけは誰にも譲れない。いや、桜乃の隣は誰にも譲る気はねぇ。


「桜乃、飯はまだか?」
「あ、おはようございます!景吾さん。えっと…もう少し待っててくださいね」


まだ新婚なだけにこういう一日の朝は新鮮でいい。
台所へ顔を出せば愛しい人がいるというのは幸せだということを初めて知った。

一つ問題があるとすれば、桜乃は早起き過ぎる。
俺は毎日したいのだが、桜乃が許すわけもなく、たまにしかできない。
そのため、普通に眠りについた次の日は俺よりも早起きをして飯の支度をする。
朝起きて、隣に桜乃がいないとなんだか心地悪い。

―寂しい

初めて知った感情だった。
桜乃がいないと寂しくて寂しくてたまらない。
桜乃が昔の青学の奴らと同窓会をしに行くと言ったときもそうだった。
親友の家に泊まると言って桜乃は帰って来なかった。
その日俺はなかなか寝付けず、結局一睡もしないまま次の日を迎えた。


俺にとって桜乃の存在というのは、とてつもなく大きいものだった。
これまでも、これからもそうだ。


「桜乃」
「何ですか?」
「ありがとう」

俺の嫁になってくれて、俺と出会ってくれて、俺を愛してくれて。
そして今、俺の傍にいてくれて、ありがとう。


「ふぇ?」


いきなり俺が柄にもなく礼を言ったもんだから、桜乃は頭の上にはてなマークを浮かべた。
きょとんとして首を横に傾げている。
そんな姿も我が妻ながら可愛いと思ってしまう俺は重症だろうか。


「…分からないならいい」
「え?あ、はい…」
「態度で示してやるからな」

お前をどれだけ愛しているか、を。

「え、えぇ?」


朝っぱらから何をやってるんだ、と言われるかもしれない。
でももう自分を止められる自信なんてなかった。


「朝食前のデザートにするか」
「け、景吾さんっ!///」


声にならない悲鳴を上げている桜乃の口を優しく塞ぎ、桜乃を軽々と持ち上げ、寝室へ向かってゆっくりと歩き出した。


「け、景吾さん!朝食が…」
「先に桜乃、な」




良い夫婦というのは愛からできているんです
(俺と桜乃の愛の大きさはちょっとやそっとのものじゃない。とてつもなく大きいものだ。)



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