あの子の声にこんなにも敏感になったのはいつごろからだろう。
あの子の顔が、表情がはっきりと頭の中に映し出されるのはなぜだろう。
最近は滅多に会えないため、幻覚や幻聴まで聞こえてくるようになってきた。
彼女は東京、俺は大阪。
この距離は決して埋めることはできないが、彼女の学校との練習試合がある日や部活がOFFの日は必ず一目でもいいから顔を見たいという理由で東京へ出かける。
いつも大きくびっくりしたような目で出迎えてくれる。
もう何回目のことやろ、と毎度思うのだがそれでも彼女の新鮮な反応は可愛くてそれが心地良いと思う。
彼女を見ていると素直に会いたい、そう思う自分がすごい好きになった。


「あー、んーと、とりあえず、どっか歩かへん?俺、未だに東京慣れへんのですわ」
「は、はい!面白そうなところ、案内しますね!!」


あー、デートなんて何週間ぶりやろ。
遠距離恋愛を長いことやっては来ているが、やはりどうしても会えないと寂しい。
今すぐに顔を見たい、手を繋ぎたい、キスしたい、一緒にいたい。
大阪に生まれたことを、大阪に住んでいることをこんなに呪ったことはない。
ずっと、これからも、桜乃の傍にいてやりたい、そう思った。


「あー、何ていうか、その…俺…」
「はい?」
「俺、大学出たらひとり暮らししますわ」
「はへ?」
「せやから、大学出たら東京に出てきてひとり暮らしする、言うてん」


「毎日でも遊びに来てな」そう言ったあと、俺の胸に涙目で飛び込んできた彼女を抱き締めた。
普段消極的な彼女が人前でこんなに大胆な行動をしたのがすごく嬉しくて、俺って愛されてるなとつくづく思った。


END.


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