02
「あれ?あの人間いなくなってる。」
「そりゃそうだろうね。」
「まさか、また僕がいないうちにぃ〜?」

真っ白な空間で女と少年が言葉を交わしていた。少年は女の言葉に拗ねたように頬を膨らまして不満を表したが、女は微笑んだまま。

「ふふ、“食べ頃”が分からないようじゃあお前もまだまだだね。」
「むぅ…。」
「ほら、拗ねないで。
でも今回は結構分かりやすかったでしょう?利害の一致で“あの子”が協力してくれたからね。」
「あぁ、小夜さんだっけ?」
「そう。小夜があの人間にとっての夢の世界であるこの世界へとあれを連れ込んでくれたからね。」
「あの人間も馬鹿だよねぇ。もっと努力すれば良かったのに、“僕たち”なんかの誘惑を怪しみもせずに受け入れるんだから。」
「ふふ、だからあの人間にしたんじゃないか。それにしても私は小夜以上に自由なのは見たことないなぁ。」

女は愉快そうにくつくつと笑い声をあげる。少年も納得したように、あぁ。と声をあげる。

「小夜さんって神様だもんね。」
「人間が好きなんだか嫌いなんだか、よく分からないよね。ほんと、あんな勝手が許されるのは彼女くらいだよ。」

女はそう言って、どこにあったのか鏡を取り出した。少年も嬉しそうに寄ってきた。

「そうだな、そろそろお前も選んでごらん。」
「ほんと!?やったぁ!」

少年は嬉々としてその鏡を覗きこんだ。そこには少年の顔ではなく、どこかの街が映っていた。

「確か、もやもやが大きくて色が濃いのが“美味しい”んだよね!」
「そう。よく覚えているね。そのもやもやが私たち、――――夢魔にとってのご馳走なんだよ。」

女は少年の頭を撫でてから一緒に鏡を覗きこんだ。

「お前も早く一人前の“夢魔”になるんだよ。」
「うん!」






















「さぁ、次の夢見る哀れな羊はどんな子だろうね?」

くすりと笑い声が空間に響いた。
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