![]() | 「これはおかしいことだよね?貴女の存在自体がないんだよ。」 「あ、ちが、そんなのなにかの間違いよ…っ」 「先生もようやくおかしいということに気づいたのか、もう一度調べ直している。しかしそもそもそれは、転入手続きの際にするべきことだ。」 柳の鋭い眼差しが私へと向けられる。ううん、柳だけじゃない。ファンクラブの女も、幸村も、私を見る目は、鋭い。 「ねぇ、貴女はどうやってこの学校に潜り込んだの?」 「も、ぐりこんでな、て、ないっ」 口がからからに渇く。あぁもうどうすればいいの?漸く私の逆ハーが始まるんじゃなかったの? 焦りや恐怖で正常な思考もままならない私の耳に、はぁ、と、まるで面倒くさいとでも言うような溜め息が届いた。柳だ。 「…ならばもっとはっきりと聞こう。」 ばくばくと心臓が嫌な予感を告げる。 「お前の、」 嫌だ嫌だ嫌だ、聞きたくない、聞きたくないのに、 「花井美羽の、」 鮮明に私の脳へと、響く。 「戸籍はどこだ?」 「うぁ…、」 私に向けられているのは訝しげで、不審げで、怪しんでいて、侮蔑を含んでいる、―――嫌悪の、視線。 「あ、ぁ。あぁああああ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!私にこんな目を向ける奴等なんていらない!こんな感情を抱かせる学校なんか欲しくない!!こんな世界、私の望んだ世界じゃない!!!!」 パンッとどこかで音がして私は目の前が真っ暗になるのを感じた。 「は…?」 「消え、た…?」 「………。」 back::next |