![]() | 「これ、どういうことなの?」 そう言って女が取り出したのは数枚の書類。ばさりと無造作に机の上へと広げられ、そのうち2枚を女が1番上に置いた。 「これがあなたの前の学校が提出したはずの書類で日本語訳したのがこっち。といっても文法はめちゃくちゃだし、スペルミスも一杯だから不正確な訳だけどね。」 それは保険医が持っているはずの私の身体情報が記入されているもの。ここへ編入してくるときに私が適当に記入した、用紙だ。 「それに筆跡から見て花井が自分で書いた確率99%だ。」 「っ、書いた人が寝ぼけてたんじゃないかなっ??それに似たような字を書く人なんてたくさんいるでしょ!?」 私を見る、不審げな目、目、目。何でそんな目で私を見るの!??何で愛してくれないの!?? 混乱した頭はぐるぐるしてて、泣きそうだ。そんなとき。 「うん、まぁ無理はあるけど、確実に無いとはいいきれないよね。」 私を庇うようなその台詞に私は彼、精市を見た。 (もしかして補正が切れたっていうのは私の勘違いだったの!?) 「まぁ、そうだね。」 「確かに無いとはいいきれないな。」 少し改善されつつある状況に口角が上がりそうになるのを耐える。 (もう私を愛してくれるなら雅治じゃなくてもいいわ!しかもそれが精市なら何にも不満はないわよね!だって部長だし、十分カッコいいしね。) ありがとう精市!そう笑顔で抱き着こうとした私は、すぐに固まることになる。 「それなら、もっと確実なものを出せばいいんだよね?」 「、え…?精市…?」 私の味方なんじゃないの!?そう叫びたいのを我慢して、精市を見る。けど、私を見る精市の目は冷たくて、出てくる言葉は残酷なものだった。 「ごめん、名前で呼ばないでくれるかな? それで、これがそう。君が前在籍してた学校の去年の全在校生の名簿だよ。」 あぁ――――、 「ここに花井美羽なんて名前は、ない。」 この現実はきっと悪夢だ。 |