02
「話って何かなぁ?」

放課後、私は精市と柳に呼び出された。漸く私の努力が報われたのかもしれない。それとも合同合宿の知らせかな。
つい弛みそうになる口元を引き締めて、一番可愛い笑顔を作る。
うふふ、こんなに可愛い私が傍にいるってやっと気づいたのよね?

「急にごめんね。今日しか予定が合わなくてさ。」

「ううん!大丈夫だよ!」

「別に人を呼んでるんだけど、今中に入ってもらってもいいかな?」

人?誰なんだろう?
あ!景吾や手塚が合宿の打ち合わせに、とかかな?それで前もってマネージャーの私と顔合わせをするために呼ばれたんだ!
ふふ、やっぱりこの世界に愛されているのは私よね!
あんな女所詮は異物。“あの人”も私を特別だって言ってくれたんだもの!
さあ、精市。早く景吾でも手塚でも呼んで!

「うんっ、待たせちゃうのも悪いし早く入れてあげて?」

「そう言ってくれて嬉しいよ。…じゃあ入っていいよ」

そして皆私だけを見て、私だけを慈しんで、私だけを愛して!その為に私はこの世界に来たんだから!!






「失礼します。」
「………は、?」

なのに、扉から現れたのは見たことのある小柄な女。当たり前よ、だってあの女は忘れもしない、――

「お久しぶりだね、花井さん。」

私を1番初めに呼び出した女。立海テニス部、ファンクラブ会長だ。

「ごめんね、幸村君を通してわざわざ呼び出したりして。」

「っ、な、」

「うふふ、もしかして氷帝の跡部君でも来るかと思ったのかなっ?」

私はその言葉に目を見開いた。
何で、私が考えていたことを…?っもしかしてこの女も?!

「あ、勘違いしないでね?私は“教えてもらった”だけだから。」

「っ、」

次から次へと先手を打たれるこの状況で、いくら精市や柳がいるからって、私に表情を作る余裕なんてあるはずもなかった。

「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど、いい?」

疑問符のついているはずのそれは拒否を許さない響きを持っていた。
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