溶けたガラスの靴
「ゆーちゃん」

「何?またサボりか?」

「違うよ。ゆーちゃんに会いにきたの」

「は?」

保健室へ行くといつも通りコーヒーを飲んでいた。時々何でゆーちゃんが保健医になれたのか不思議になるのは私だけなのかな。

「んふふ。この前くれたの使う予定だから、一応報告」

「、あぁ。…それか」

そう言うとゆーちゃんはどこか落ち込んだ。相変わらず、分かりやすい人だなぁ。

「ゆーちゃんに会いたかったっていうのもあるんだよ?」

「はぁ?!お前、からかうのもいい加減に…!」

「顔、赤いよ?」

これだからゆーちゃんをいじるのはやめられないんだよなぁ。年上にこんなこと思うのは失礼だけど、私とゆーちゃんの仲だからということで。

「なに教師を口説いているんだ。」

「ん?柳?」

「別に口説かれてなんかねーよ!」

急に第三者の声が聞こえたかと思うと、柳が保健室に入ってきた。何だか必死に否定するゆーちゃん可愛い。

「お前を探していたんだ。」

「私を?」

「あぁ。あいつのことでな。」

柳はあいつ、とぼかしたが十中八九花井さんのことだろう。

「ゆーちゃんも知ってるから大丈夫だよ。」

「高城先生もか?」

「こいつから何回か話を聞いてるからな。」

自分だって協力してくれてる癖に、相変わらず誤魔化すのは上手いんだから。

「ゆーちゃんは一応保健医だからね。心のケアってやつだよ。」

「ふむ…ならここで話をさせて貰う。」

柳ももっともらしい私たちの言葉に納得したのか、ノートを開き本題に入った。

「あいつは――花井美羽はいったい、」

“何を望んでいる?”

私はその言葉に唇を歪めた。視界の端ではゆーちゃんが何故か不機嫌そうに顔を歪めている。

「(何かあったのかな?)ふふ、どうやら君は合格だね、柳君。」

「ならば………」

「そんな合格な君にはご褒美だ。ちゃあんと教えてあげる、詳しく、ね。」

どのみちそろそろ飽きてきたところだったし丁度いいよね。
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