03
「それにしても快挙じゃ。」

3人で屋上でお弁当を広げたところで仁王がそう口を開いた。

「何が??」

急に言い出すもんだからなにがなんだかわからない。赤也も頭の上に?を浮かべて不思議そうに仁王を見る。

「おまんの英語じゃ、英語。赤点取らなかったなんて初めてなんじゃなか?」

仁王のその言葉にびっくりしてついつい赤也をじっくりと見てしまった。

「初めて…?」

「ちょ、そんな可哀想なもん見るような目で見ないでくださいよ!
は、初めてじゃないっすから!……たぶん、」

小さく足されたたぶんの声に、赤点取らなかったことがなかったんだと悟る。

「っそれより、仁王先輩は国語どうだったんすか?!」

つい、うわあ、という視線を向けてしまったのでその視線に耐えられなくなったらしい赤也がわざとらしく話を逸らした。

「俺は96じゃ。教えて貰った成果がちゃんとでたからのう。」

「うっ」

「でも減点のうち2点は小豆を「こまめ」って読んだからだよね。」

「うううるさいぜよ!
しかも誰に聞いたんじゃっ?!」

私の予想外のカミングアウトに仁王は顔を赤くしてあわあわとしだした。

「ぎゃはは!先輩だって人のこと言えねーじゃねぇっすか!」

「昨日柳君が教えてくれた。」

「くっ柳!何で知っとるんじゃ!
それより赤也、おまん今日の部活覚えとけよ。」

仁王のその言葉に笑い続けていた赤也の肩がビクリと跳ねて、顔がみるみる青くなっていく。

「じょ、じょーだんっすよ!じょーだん!
ほ、ほら、俺の英語の点数に免じてっ!」

はたから見ていると確実に主人に怒られた犬である。

仁王もそう思ったのか、肩が少し震えている。

「……ぷ、くくっ分かったナリ。」

ぱぁあと赤也の顔が明るくなる。今度はあるはずのない尻尾がブンブンと振られている。

「赤也、」

「なんすか?」

私の呼び掛けに赤也が不思議そうにこちらを見た。

「お手。」

ぽん。とナチュラルに私の差し出した手の上に手が乗る。

「んーやっぱわんこだったか。」

「わんこだったの。」

仁王と目が合い、つい笑ってしまう。

「え、ちょ、二人してなんなんすかぁ!」


いまだにお手をしている意味が分かっていないような赤也をスルーして暫く笑い続けた。
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