02
「せんぱーいっ!」

「わっ?!」

四時間目が終わり、昼ご飯屋上にでも食べにいこうか、と考えていると背中に衝撃が走った。

「びっくりしたー…」

「聞いてくださいよっ!つーか見てください、これ!」

そう言って赤也が差し出した手には紙が握られていた。

「英語のテストでこんな点初めてとったんすよ!先生にすっげぇ誉められたし!」

ばっと赤也がその紙を開いてそう言う。紙、もといテストには右上に赤ペンで82と書かれていた。
目を輝かせて誉めてくれっと言わんばかりの赤也が何故か尻尾をぶんぷんと振っている犬に見えた。

「頑張ったね赤也。勉強した結果、すごい出てるじゃない。」

とりあえず誉めて頭を撫でてみる。

「先輩のおかげっすよぉ!これで幸村ぶちょーにも堂々と会えるぜっ!」

満面の笑顔を向けられた。まぁ、あの英語力でここまで点がとれたんだ、私が教えた以外にちゃんと自分で勉強したのだろう。

「ふふっお疲れ様、赤也。」

「先輩っ大好きっす!」

がばちょっと抱きつかれた。クラスの皆からの飼い主とペットを見ているような温かい視線がびしびしと背中に刺さっているきがする。

「わかった、わかった!わかったからとりあえず、苦しいから」

離れて、と言おうとしたところでべりっと赤也が剥がされた。

「いつまで抱きついとるんじゃ。さっさと昼飯行くぜよ。」

「ちょっ!仁王先輩!俺の持ち方ひでーっすよ!下ろしてくださいよぉ!」

何故か首根っこを捕まれている赤也がそう声をあげた。

「わんこはこれで十分ぜよ。ほれ、小夜も来んしゃい。」

仁王が私にそう声をかける。赤也はまだ首根っこを捕まれたままだ。

「仁王、昼ご飯食べに行こうか。」

「えっ!まさかの俺スルーっすか?!」

取り敢えず仁王の悪ふざけに乗って赤也をいじってみると、そんな声があがった。

「冗談だよ。ほら、仁王、離してあげて。」

「しょうがないのう。」

「やっと解放された…」

ちょっといじめ過ぎただろうか。まぁ、多少のやりすぎはご愛嬌ということにしよう。

「ほな、昼飯食いに屋上でも行かんか?赤也、お前も弁当取ってきんしゃい。」

「っす!」


赤也やそう元気に返事をすると、急いで教室に帰った。
私は何だか3人で食べる流れになっちゃったなぁ、と思いながらも仁王と屋上へ向かった。


「っなんなのよ、あの女…っ」

少女は二人の後ろ姿をながめ顔を歪めた。

「っもうどうなっても知らないんだから!」

にたり、少女の口が歪に歪められた。
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