![]() | 「…あり?」 朝靴箱を開けるとそこはパラダイスでした。 「?どうしたの?」 偶然隣にいた女の子が固まっている私を心配そうな目で見てきた。 「や、なんでもないよ。ちょっと反抗期なのかも」 「は?」 私はそう返して靴箱から手紙を抜いてから上履きを履かず、教室とは違う方向に向かった。 「“これ以上私の邪魔をすると地獄を見る”、ねぇ…??」 予想通り過ぎて逆につい吹き出してしまう。中庭で1人で笑ってるなんて痛い子になりたくない私は必死に笑いを飲み込んだ。 (それにしても、この馬鹿そ、じゃなかった。あまり賢そうじゃない手紙は花井さん、かな?) 指先で手紙をぴんっと弾く。 (随分強気だね。…面白くなってきたかも) 私はすがすがしいぐらいに晴れた青空を見上げた。 「じゃあこの間のテスト返すぞー あ、赤点のやつは今日の放課後補習すっからこいよ。」 「えぇっ?!」 「そんなぁ!」 「嘘だろーっ?!」 「部活いかせてくれよーっ」 何人かは先生の言葉にそう声を上げた。 「部活より補習優先でーす。 俺だって面倒くさいんだからお前らも我慢しろ。 名前呼ぶから出席順に取りにこい。 じゃあ相川ー。」 先生がそんな生徒たちの嘆きを一刀両断し気だるげに名前を読み上げていく。ていうか、さりげなく本音も混じっていた。 「花井ー。平田ー。福島ー。丸井ー。………」 テストを返された花井さんと丸井の顔が青く染まった。おそらく赤点だったのだろう。仁王は興味無さげだからたぶんそこそこなのかな。 「(うーん、やっぱり頭良くないみたいだね。ま、仁王は私が“わざわざ”教えたんだから赤点なんてあるわけないよね。)」 心の中でわざわざ、の部分を強調してみた。意味ないけど。 丸井と仲良く励ましあっている彼女を見ると、赤点を取ったわりには嬉しそうに見える。 「(それにしても彼女、何を仕掛けてくるのかな。 結構私、頑張ってるからあんまり私の期待を裏切らないで欲しいな、なんてね。)」 私は目の端で彼女の姿をちらり、ともう一度捉えてから先生の解説に耳を傾けた。 back::next |