03
もじゃもじゃの話をまとめるとこうだ。
彼はテニス部唯一の2年生レギュラーで、先輩たちと仲もいいもんだから妬んだほかの先輩たちに取り入っただとかいちゃもんをつけられて、あげく蹴り飛ばされたが、尊敬する先輩に迷惑がかかるのはやだからともじゃもじゃは仕返しもせずそれに耐えたらしい。しかし、いくら尊敬はしていない先輩からでも、そう言われるとどこかショックで、その結果のこれだそうだ。

「…これはただの寝言、だけどね?
私はさ、君が凄いと思うよ。この常勝と言われる立海でレギュラーでしょ?誰がなんと言おうと、それは君の実力だ。努力の結果だ。人の何倍も頑張っただろうことぐらいこの豆だらけの手を見ればすぐに分かるよ。これは何度も何度も努力した人の手だ。その計り知れない努力を理解もしてない奴らなんて相手にするもんじゃない。」

もじゃもじゃの豆だらけの手に優しく触れるとばっと顔を上げた。

「それにね、人の為に我慢ができるなんて君が素晴らしい人の証拠だよ。それだけ努力ができてその上人の為に、自分の大事な人の為に我慢ができるんだ。君は自身を誇ることはしても落ち込む必要なんてないよ。」

私が言い終わると、もじゃもじゃが泣き出した。

「俺、俺、っ自分のことっ…褒めても、いいのか?俺の努力って本物だって、っ無駄なことなんかじゃねぇって、思っていいのか…?」

「いいんだよ。誰がなんと言おうと私が保証してあげる。君はよく頑張った。」

泣きじゃくるもじゃもじゃの頭を撫でてやる。……意外と手触りがいい。

「ぁり…う、っ、ありがとう…!」















しばらくして俯いて泣いていたもじゃもじゃが顔を上げた。
人前で泣いてしまったことが照れくさいのかどこかもじもじしている。
(もじゃもじゃがもじもじとか…!)
変なことを頭で考えて、それに噴きそうになったときもじゃもじゃが口を開いた。


「あ…その!俺は2年の切原赤也!…お前、は?」

「ふふ、私は3年夢月小夜だよ。」

学年を告げるともじゃもじゃ、もとい切原の目が見開かれた。

「せっ先輩かよ……じゃなかった!小夜先輩!いろいろとありがとうございました!俺、前にもこういう事があってずっと悩んでたんす。けど先輩にそう言って貰えてすっきりしたっす!
あ、あと、最初しつれーな態度とってすんませんっした!、その…ファンかと思って。」

「私はただ寝てただけだからね。私は何にも知らないよ。ふふ、それじゃあ私は行くね。あ、そうだ。切原くん、少年よ、大志を抱け!だよ。」

私は手をひらひらと降って保健室を後にした。

(………結局寝れなかった。)
(やべ、先輩ちょーかっけー…!いつの間にか手当てされてるし、しかも完璧とか…)
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