02

「欲しい、もの…?」

彼女のその言葉に口の中がからからに渇いて上手く言葉がでない。そのため、彼女に見つめられるのが恥ずかしくてつい、俯いてしまう。

彼女の綺麗にかたどられた笑顔にすら気づかずに。

「そう、権力でも財力でも、…人の心でも、なぁんでも。」

心臓がどくん、と跳ねた。

「人の心でも…?」

「もちろん。
でも人の心の場合は望むと前にかけた補正は無くなってしまうんだ。」

「え?」

「人の心って言うのは難しくて繊細だからね。ほいほいあげられるものじゃないんだ。ごめんね?」

その一言に歓喜していた心がすとんと冷静になる。

(補正が、消える?じゃあ私は景吾や蔵や周助や幸村に、―皆に愛されない…?
そんなの、いや…っ!)

「今すぐに答えはいらないよ。3日後にもう1回聞くからその時に答えてくれるかな?」

「…、はい。」

混乱し続ける頭には難しすぎる結論だったのが伝わったのか彼女はそう言って微笑んだ。





「もう決まったかな?欲しいもの。」

「、私が欲しいのは―……。」

私が考え抜いて出した結論を口にすると、彼女はにっこりと笑った。


その笑顔が一瞬恐ろしく見えてしまったのはきっと私が疲れているからだろう、と自分に言い聞かせた。

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