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(岩渕さんの話から考えると、丸井達に働いてる所望‘補正’というのが平部員にまで働いてるのか、あの奇麗な顔と体で惚れさせたか、そのどっちかだね。)

‘補正’が平部員にまで及んでいた方が面白いんだけどな。でも一部って言ってたから違うのかな。

彼女も私を嵌めようとしたり、他の女の子に醜い嫉妬をしたりと本当に忙しい子だ。

そんなのしてる暇があったら自分を少しでも磨いた方が早いんじゃないかな。

ま、それをされちゃ私が面白く無いから別にしてくれなくても、いやしてくれない方がいいんだけど。

(それにしても、彼女のあの狂気的なぐらいのテニス部レギュラーへの、特に…――仁王への執着はどこから来ているのだろう?)

仁王本人は気づいていないであろうけど、彼女が1番執着してるのは紛れもなく、仁王だ。

仁王を見るときの彼女の雰囲気が、顔が、目が違う。

テニス部レギュラーを見る目もそりゃあ違うんだけど、仁王の時は更に違う。

(まあそれは、私が仁王と話してる時にも言えるんだけどね―。)


「……ん、…さん、夢月さん!」

とそんなことを考えていると、岩渕さんの私を呼ぶ声で意識が戻る。

「あぁ、ごめん。ちょっと考え事をしてて…。」

「ううん、大丈夫だよ!それでね、せっかくだから名前で呼んでもいいなかぁ?」

岩渕は不安げな表情で此方を覗きこむ。考えていなかった質問だけど、私はすぐに笑顔で答えを返す。

「もちろん喜んで。」

「やった。じゃあ小夜ちゃんだね!」

「ふふ、そうだね。」

目の前ではしゃぐ彼女を見つめる。私の言葉を勝手に解釈して、勝手に私のオトモダチになった気になって、先ほどまでのどこか暗かった雰囲気が明るくなってる。

(あぁ、人間ってなんでこんなに面白いんだろう…!自分のいいように思い込んで、何かに依存してそしてまた絶望して。それでもそれをやめないなんて、なんて愛らしくて哀らしいんだろう。)

口の端が無意識に上がっていたらしい。

そんな私を見て彼女は顔を笑顔で埋め、言う。私がどんなことを考えているのか、疑いもしないで。


「小夜ちゃんと友達になれて良かった!これからも宜しくね!」

私はそんな彼女に笑顔で頷く。
「私も貴女とトモダチになれて良かったよ。」

愚かで哀らしい、そんな君とね。
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