03
「テニス部の平部員が苛めを?」

「や、全員ってわけじゃないんだけどその、花井さん親衛隊的な…?」

彼女の口から聞かされた事実はやはり興味深いものだった。

「でも、何で親衛隊的なのに苛められるの?特に岩渕さんって花井さんと関わりないよね?」

「それが、何人かの部員に急に呼び出されて花井さんが私に苛められたって泣きついてきたって。」

「それ、ほんと?」


私がそう聞き返すと岩渕さんは苦々しい顔をして頷いた。どうやら花井さんは腹のなかがとことん真っ黒らしい。

「それで、ある日部員達が去ったあと花井さんが来て、「これ以上私のレギュラー達に近づいたらもっと酷いことになるんだからね!」って…!」

「それは……酷いね。」

つい顔が緩みそうになるのを無理やり押さえ込み悲痛な顔を作る。

「、それで夢月さんもレギュラー達と仲がいいし花井さんによく睨まれてるみたいだったから…。」

私が苛められていると思った、か。しかしそれを聞いてどうするつもりだったのだろう。

(まぁ大方傷の舐め合いだろうけど。私は可哀想、誰か分かって!誰か助けて!って悲劇のヒロインみたいにね。)

「私も彼女に嘘つかれたよ。何人かはまだ私を疑ってる。」

岩渕さんの目が見開かれる。

「じゃあ、もしかし」

「失礼します、ケーキお持ちしました。」

彼女が口を開いたところで丁度ケーキが運ばれてきた。
美味しそうなケーキを一口食べてから私は口を開いた。

「でも、私は苛められていないよ。まぁ嘘つかれたのが最近だからかもしれないけど。」

「っもし、もし苛められたら?どうするの?どうしたらいいの?」

彼女からの質問に彼女の本音が混ざり始める。

「自分を信じてくれる人が1人でも居てくれれば、私はそれで大丈夫だよ。」

「でもっ!皆、自分が苛められないようにって離れていったの!誰も助けてなんて、信じてなんてくれないっ!」

溜まりたまっていたものの蓋が外れたのか、岩渕さんから悲痛な声が上がる。

「…ねぇ、私がいるよ。」

「ぇ…………?」

「私が、君の側にいるし、信じるよ。だからこれ以上苦しまないでいいんだよ?」

岩渕さんの目が見開かれ、潤み、涙が流れ始めた。

「ほ、んと…?」

「うん、本当。」

「で、でも何でそんなっ対して仲良くもない私をっ、」

「だって私達クラスメイト、仲間でしょ?(なあんて。)」

そう私が言うと、本格的に泣き始めてしまった。

彼女は今までの気持ち何かを私に打ち明け始める。私はそんな彼女を慰め続けた。


(それにしても…――仲間。なんて素敵で、



便利な言葉なんだろう。仲間、それを口にすれば勝手に分かり合えた気になれるし、常に自分に味方がいる気にもなれる。)

でも、ね、君は気づいてるかな?私は君を助ける、なんて勿論口にしてないし、ましてや君を一度も友達だなんて言っていないんだよ?
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