02
「夢月さん…、」

廊下を歩いていると誰かに呼び止められた。

「?…あれ、岩渕さん?どうしたの?」

振り向くとそこにいたのは岩渕由奈、クラスメイトの女の子だ。

「あ、あのね?もしかして、ほんとにもしかしてなんだけど、夢月さんって花井さんに苛め、られてたり、しない、かな?」

「え?」

花井さんに苛められてる?何で?
予想外の質問につい反射的に疑問の声が漏れた。

「ぇ、あっちっ違うの!間違えたの!ごめん、気にしないで!」

すると岩渕さんは咄嗟に否定を繰り返し、その場から逃げ出した。

「ねぇ、何でそう思ったの?」

いや、逃げ出そうとした。まぁ、私が手を掴んだからなんだけど。こんな面白そうな話、聞き逃すなんて勿体ない。

「ぅう、…は、離してよぅ!ほんとに間違えただけなの!」

「あんな台詞どこをどうすれば間違うの。
もしかして、花井さんに苛められてるの?」

1番無難で王道な質問をする。と、彼女の肩が跳ねた。

「ち、違う!花井さんには苛められてないの!」

「花井さん“には”?」

「ぁ、」

しまった、という顔をする岩渕さん。何て分かりやすい子なんだろう。

「ねぇ、ちょっとお茶でもしにいかない?ケーキが美味しい店、知ってるんだ。」



何で私、ここにいるんだろう。

「………。」

「ん?ケーキ頼まないの?美味しいよ?」

「い、いや、ぁ、このザッハトルテお願いします…。」

(いやいやいやいや、違うだろ私!何で暢気に注文なんかしてるの!)

目の前には優雅に紅茶を飲む夢月さん。何で私は頭も良くて、美人で優しくて、…テニス部とも仲がいい彼女とお茶してるのだろう。


「ここのザッハトルテ、美味しいんだよ。」

「はぁ、…。」

「で、本題に入らせて貰うね?」

まぁ私が原因なんだけど。彼女もテニス部と、特にレギュラーと仲がいいからそうなんじゃないかと思ったのだ。

「あ、言いたくないことは別に言わなくても大丈夫だからね?困らせたいわけじゃないから。」
こんな時でも私に気を使ってくれるなんて、やっぱり彼女は優しい。誰だってあんなこと言われたら気になるだろうし、根掘り葉掘り聞こうとするだろうのに。
彼女になら…。私はそう考えて、腹をくくった。ちゃんと話をしよう。別に知られても困る話では、ない。…………多分。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -