![]() | 同日、ほぼ同じとも言って良いような時間帯。真っ暗な部屋の中で1人の少女がパソコンの液晶に照らされていた。 「何か!何かないの!?あいつを確実にそして、残酷に堕とす方法は…!」 少女―花井美羽は苛々とした焦燥に刈られていた。毎日綺麗にケアしていた桜色の爪を無意識にがしがしと噛む。楕円形に切り揃えられていたそれは、もう見る影もなくがたがたになってしまっている。 「このままじゃ終われない!せっかくあそこまでしてこの世界に来たのよ?!終われるわけないじゃない!」 一人言にしては大きすぎる声で少女は叫ぶ。ストレートパーマをあて、毎日パックをしているさらさらな髪をぼさぼさにするようにかきむしっている。 しかし、それも束の間。すぐに別の感情に切り替わった。彼女の口の端がまるで糸に引かれているかのように上がり始める。 「ふふ、うふふふふ、早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早くハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤク…!皆をあの悪魔から解放してあげなきゃね?」 まるで人形のように生気の抜け落ちた底無しの闇のような色が彼女の目をじわりじわりと染め上げる。にたり、と歪に歪んだ口元はいかにも不釣り合いだ。 「夢月、小夜…! 皆を操ってる最悪な、女。」 グシャリと近くにあった紙が握りつぶされる。 「でも、どうしたら皆目を覚ましてくれるの…?」 彼女は考えなしのようで、実は周囲からの自分の評価を理解していた。否、あそこまであからさまに扱われれば誰でも熟知しうるだろう。 女子からは圧倒的な嫌悪と侮蔑が、男子からは一部からの嫌悪と過半数の無関心が向けられていることなんて。 しかし、小夜を嵌める上で女子からの嫌悪と侮蔑は痛手である。そこをどうにかしないことには話は始まらない。 (別に女子全員を味方に着けなくてもいいの。力の強い女たちだけを味方につけられればそれでいい。例えば、…そうだわ!過激派なファンクラブの女たちを味方に出来れば…!) 邪悪な笑みが美羽の顔に浮かぶ。そしてキーボードを叩き、今後の綿密な計画を打ち込んでいく。時には追加し、時には削除し、絶対に失敗することのないよう、細心の注意を払いながらシナリオを練り上げていった。 back::next |