03
小夜さんの住所を仁王先輩が半ば騙すような形で担任から聞き出し、今、俺と仁王先輩、幸村部長は小夜さんの家に来ている。

突然の来訪に小夜さんは嫌そうな顔をしたが、最終的には俺たちを迎え入れてくれた。やっぱり彼女は優しい。


(ま、幸村部長と仁王先輩が揃ってるせいでもあるんだろうけど。ま、小夜さんといられるんだから問題無いっしょ!)

今日ほど部長と先輩が味方でよかったと思ったことはない。
……嘘、結構あった。

昨日はあんな女のせいで空気は最悪でテンションは下がる一方だったが、持ち直した、むしろ下がる前より上がった。

(あー分かんね〜…。)

教えてもらって少しは出来るようになったとはいえ、英語はやっぱ苦手だ。頭をがしがしと掻く。

こうなればいっそ誰かに聞こうと思い、俺は顔を上げた。

「、…。」

小夜さんを部長が見つめていた。何だか俺は見てはいけないものを見た気がして咄嗟に顔を下げる。

一瞬だけ見えた部長の目に映っていたあの狂気染みた色が俺の頭の中に染み付いていた。

そして、視線を向けられている小夜さんの方が気になった俺は、そちらをちらりと見る。しかし、本人は勉強に集中しているのか気づく様子はない。すると、


(、まじかよ…)

彼女の隣の仁王先輩から幸村部長に牽制のような視線が向けられていた。しかし部長はそんな仁王先輩に挑発的に笑みをこぼすと、再び勉強に戻る。
先輩がさらに目を険しくしたのが見てとれた。
それにしても、……――
(俺は眼中になし、ってか。)

2人ともこちらにはちらりとも意識を向けなかった。

(テニスじゃまだ勝ててねぇけど、小夜さんでまで負けるとは限んねぇだろ。)

例え先輩たちにでも負けるつもりはさらさらねえ。生憎、先輩たちの警戒は俺に微塵も向いていないのだからある意味チャンスだ。

2人には悪いけど、互いに警戒しているうちにもっと小夜さんに近づこうじゃないか。

「小夜さん!ここってどういうことっすか?」

2人からの視線がこちらに向けられた気がしたが、気にしない。俺はこちらに向けられた黒曜石のような瞳だけを見つめた。
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