運命論を咀嚼する
「はぁ…。」

何だか最近、花井さんからの視線に更に丸井からの視線が加わった。

(何かしたのかな私。それにしても、ストレス溜まるー…。)

花井さんの視線には悲しいかな、慣れてしまった自分がいる。まぁ敵意100%だからいっそ清々しくもあるのだ。

(でも、丸井のはなー。)

何だか敵意のようなものの中に丸井自身の戸惑いのようなものを感じるのだ。まぁそれは丸井に限ったことではなく、廊下ですれ違った時の真田や柳生にも言えることなのだが。

そんなことをつらつらと考えながら授業を受けていると、突然当てられた。

「夢月!お前ぼけっとしてただろ、この問題解いてみろ!」

性格の悪そうな数学教師がにやりと笑ってそう言う。大方私が問題を解けないと思って恥をかかせようとしているのだろう。
私は席から立ち上がり、黒板の問題に目を通しながら教壇に上がりチョークを握った。

(あれ、これ高校範囲じゃん。)

相加・相乗平均を使わなければ答えが出ない問題だ。中学生にこんな問題出すなんてどれだけ性格悪いんだこいつ…。

(でも、ま、解けなくはないんだけど…。)

とりあえず、私は黒板に嫌味なほど丁寧な答えを書いた。

「出来ました、先生。」

そして嫌味のようににっこりと笑ってやる。

「ぐっ…せ、正解だ。」

何だか勝ったような気がして席に戻ろうとすると、花井さんが凄い形相でこっちを見ていた。清々しい気持ちが薄れ顔が少しひきつる。

とりあえず見なかったことにして席に帰った。



「小夜さん、さっき凄かったね!何だかすっきりしちゃった!」

「私も!あいつ嫌いなんだよねー。」

「ふふ、ありがと。」

授業が終わると何人かの人たちに褒められた。やっぱり皆もあいつのことが嫌いらしい。
それから何人かと雑談をしていると、担任が入ってきた。

「お前らー期末の範囲貼っとくから見とけよー。これで赤点取ったら部活暫く補習やらなんやらで出れなくなるから気をつけろよ。」

やる気なさげな担任の声に只でさえ下がるクラスのテンションが更に下がる。

「あ、あと今年から2枚以上赤点取ったら試合の出場禁止になったから、試合出たかったらちゃんと勉強しとくんだぞ。」

担任が爆弾を落として出ていった。テスト前だというのにすでに何人かが干からびていた。

そもそも赤点なんて普通中学生には関係ないはずなのに、悲しいかな立海は文武両道の厳しい決まりがあるため赤点制度が中学からあるのだ。
さすがに留年はないけれど、補習がスッゴく面倒くさい…らしい。
おまけにテスト問題はだいたいいやらしい問題が多いから普段勉強していないと大変なのだ。今回は期末だから範囲も広いし。

(まあ私には関係ないけどね。)

珍しく花井さんからの視線が途絶えた私はどんよりとした雰囲気の中1人上機嫌だった。

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title by 告別
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