![]() | 「ねぇ、僕まだ答え教えて貰ってないよ!」 夕日の射し込む部屋で少年が言う。普段は笑顔に彩られているであろうその顔には不満が存分に表れている。 「あれ?そうだったかい?」 惚けたような声音で女が返す。 「もー!いつも僕が騙されると思ったら大間違いだから!」 頬に空気を入れぶすくれる少年に女がくすりと笑う。 「ふふ、ごめんってそんなに怒らないで。」 「早く教えてよぉ!」 「一応お前も×××の端くれ何だから自分で考えることも大切だよ?」 母親が子供を諭すかのような態度をとる女に少年はまた口を開いた。 「今回は教えてくれるって約束したじゃん!今回こそは騙されないんだから!」 少年の口ぶりからして何度もこの女にこんな調子で騙されてきたのだろう事が伺える。こちらにまで今回こそは、と確固たる意志が伝わる程に。 「頑固だねぇ…。昔はとっても可愛かったのになぁ…。」 うぅ…、とわざとらしく泣き真似をして見せる女に少年が再び膨れっ面になる。 「誰のせいだと思ってるの?!ほら!は、や、く!」 「しょうがないなぁ…。じゃあ、紅茶を淹れてきて。あぁお茶請けにはこの前貰ったマカロンをよろしくね。」 「えぇ?!」 「何、聞きたくないの?」 「むーー!」 「ちゃんと茶葉は蒸らすんだよ。」 「わかってますー!」 少年はよっぽど答えが聞きたいのか女の指示に従ってしぶしぶながらもキッチンへ向かう。女もなかなかいい性格をしているようだ。 「さて、何を教えて欲しいんだっけ?」 椅子に堂々と座った女は妖しく微笑んだ。 back::next |