03
「はぁ?!今何て言ったんすか?!」

「っだから、小夜が美羽を虐めてるっつったんだよぃ!」

赤也の荒い問いかけに同じように語気を荒くして丸井が答えた。それと同時に部室内にいた人々の目も見開かれる。

「丸井、詳しく説明して。」

幸村が拒否を許さない声音で言う。

「、昨日の昼休みに美羽が小夜と仲良くなりたかったらしくて、呼び出したんだ。そしたら小夜は拒否したあげく突き飛ばしたかなんかで美羽が足を思いっきり痛めたんだよぃ。」

「、そんな女性だったなんて…。」

「まったくもってけしか…」

ドガッッ

真田の台詞の途中で近くの小さな椅子が蹴りあげられる。

「ちょっと黙れ。」

いつもの方言が抜け落ちた仁王が発した言葉には隠そうともされていない怒気がにじんでいる。
普段は飄々としている彼の怒りに室内は静まりかえる。


「ちょっちょっと待ってくださいよ!俺その場にいたっすけど!!」

「は?」

「どうゆうこと?」

「俺勉強教えて貰う約束してたから小夜さん探してて、見つけた時あの女と一緒にいたから小夜さんが何かされるんじゃないかと思って見てたんすよ。」

「じゃあ、赤也は目の前で美羽が虐められてるとこ見たんじゃないかよぃ?!」

「はぁ?!んな訳ねーだろ!あの女が小夜さんに一方的に暴言吐いて勝手にどっかいったんだよ!!あの女が嘘吐いてんだよ!!」

「っ?!で、でも美羽が…。」

「ブンちゃんは赤也よりあれを信じるっちゅうんか?」

何の感情も籠っていない目が丸井に向けられる。そんな目を向けられたのは初めての丸井は萎縮してしまう。

「し、しかし!美羽さんがそうおっしゃったのなら!」

「だいたい話がおかしい。呼び出されて、なら分かるがわざわざ自分から呼び出して、なんて些かおかしいと思わないのか?」

柳生が反論を呈すも柳の冷静な切り返しに黙るしかない。

「そもそもファンクラブに苛められてる、ってところからあれの自作自演なんじゃない?一回でも苛められてるところ見たの?」

「しかし、仲間を信じるのは当たり前ではないか?!」

「仲間…?気持ち悪いこと言うんじゃなか。あれはただの異物じゃろ。」

真田の問いに仁王が顔を歪めて答える。

「まぁ何処からが自作自演にしろあれは俺たちに害しか与えないのは確かだよね。」

「っそんな言い方!」

「事実でしょ?問題は持ち込むはサポートせずに喚くだけだわ。あいつがなんかプラスになるようなことしてた?」

淡々と語る幸村に誰も言い返す事が出来なくなった。

「まぁあれのせいでこれ以上練習が遅れるのはよくないから、この話はまた今度。
でもね、今度小夜さんのことを貶したら、ただじゃおかないから。」

声をワントーン低くして呟いた台詞に赤也と仁王も同意するかのような態度を見せた。そのあと先に3人はラケットを持ち練習に向かう。
そして部屋に残された者の中には微かな疑問が残った。


「どうして自分はここまで美羽を庇おうとしているのだろうか?」

好きだから当たり前なのだが、その疑問は「好き」だけでは片付けられない歪なものに感じられた。
back::next
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -