愉しい遊戯
「はぁ?じゃあなに!?ソイツの怪我は私たちがやったって言うわけ?!」

「あぁ、だからそう言っているのだ!」

「やってないっていってるじゃない!」

朝、靴箱へ向かう途中で激しい口論が聞こえてきた。女の方は確かファンクラブの子だ。男の方は…

「しかし、貴方たちは美羽さんに嫌がらせをしているそうじゃないですか。」

「あいつだって私たちに仕返ししてるから同罪よ!」

「美羽がそんなことするわけないだろぃ!苛めてる上に嘘つくんじゃねぇよ!」

テニス部レギュラー様、だ。どうやら花井さんのことで揉めているらしい。

「そうだぞ!けしからん!」

「っっなによ!あいつの言うことは無条件で信じるのに私たちの言うことは信じてくれないの?!」

「そうよ!私たちはずっと応援してたのに、たった3ヶ月前に来たあの女の方を信じるの?!」

真田の剣幕に怯んだ女の子たちだったが、2人の女の子が反論した。

「「っ!」」

すると今度はレギュラーたち(と言っても3人だが)が黙り込んだ。確かに言っていることは的を射ているのだ。片方は無条件に信じて片方は一方的に信じないだなんて独裁にも程がある。

最近の彼らは前にも増して独りよがりな気がある。
(いや3人だから3人よがり、か。)

しかし、そこで都合よくSHRが始まる予鈴がなる。

(これからが面白そうだったのにぃー)

「、とにかく今後美羽には手を出さないで下さいね!」

何だか負け犬のような台詞を吐いて3人は去っていった。それをぽかん、と見つめていた女の子たち。

(ねぇ、君たちは気づいてるのかな。人の気持ちって案外簡単に変わっちゃうんだよ?)

「…何か私、何で丸井君のファンだったんだろ。」

「私も思った!何かばっかみたいだよねー。」

「柳生君ってもっと大人な人だと思ってた。」

「その上あんなブリッコ女に騙されるなんて見る目ないしさー!」

「え、真田ってあれで王者(笑)とか気取ってるんだ!」

「むしろ自分がけしからんでしょ!」

「確かに!ウケる!」

「まあ、あの3人には幻滅したよね!」

「「「「「ねー!」」」」」

(ほら、どんどん君たちだけが先走って居場所がどんどん狭くなるよ。そもそも花井さんが苛めてられててもテニス部が原因とは限んないし、どれだけ自意識過剰なの。)

まぁこの様子だとこれからどんどん目に見えて変化が起こるだろう。それに彼らが気付くかは、わからないけど。
ま、私が楽しめれば彼らがどうなっても知ったこっちゃないし。


刹那に吹いた風が葉々をザワリと揺らせた。まるでこれから何か起こると言わんばかりに―……。
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