03
「小夜ちゃん!大丈夫だった?あいつに何かされてない?」

教室前で赤也と別れ中に入ると一気に数人の女の子に囲まれた。

「え、大丈夫だよ?何かよく分からないこと言われただけ。」

「良かった!」

「なかなか帰ってこないから心配してたんだよ?」

「え?花井さんは帰ってないの?私より先に帰ったはずなんだけど…。」

「ううん、帰ってきてないよ。」

何だか引っ掛かるなぁ。

「どうせレギュラーのとこに媚でも売りに行ったんじゃない?」

「そうだよ。ま、何にしても無事で良かった。もし何かされたら言ってね?」

「うん、ありがとう。」

変だなぁ。あんなに意気揚々と帰って行ったのに教室に帰ってないなんて。
何だか嫌な予感をひしひしと感じながら私は女の子たちをやんわりと交わし、自分の席に戻った。
―キーンコーンカーンコーン

ガララララ

予鈴が鳴ったと同時に教室のドアが開いた。何故か皆の視線がそちらに向いた。

入ってきたのは花井さんだった、ただし

「美羽!どうしたんだよ、その足?!」

足に大げさなまでにテーピングを施していたが。

「や、ちょっとね…。」

苦々しく笑う花井さん。少し弱っているような笑顔を浮かべる彼女に心底心配そうに近寄る丸井。自然と皆の視線が2人に集まる。

「、もしかしてこの前の…」

「ち、違うよ!その、ちょっとほら!こけちゃったの!」

「これ以上無理すんなよ!やっぱり…!」

ーキーンコーンカーンコーン

丸井が何か言葉を続けようとしたとき本鈴が鳴った。

「ほ、ほら!授業始まるよ!」

―ガララッ

「ほらお前らどうしたんだ。早く席つけよ〜。」

「っ…。」

先生の言葉も相まってか丸井もしぶしぶ席に座った。皆もそれに続き席に座った。
――…花井さんは足をひきづりながら、ではあったが。


それにしても、おかしい点がある。あんな怪我なら移動もままならないはずだ。治療もいくら早くても怪我の状態を見たり、動きを確認したりと5分以上はかかるだろう。

つまり、いくら怪我をしたところが保健室に近くても教室は南館の3階で保健室は北館の1階だ。教室まで来るのに少なくとも合わせて15分以上はかかるはずだ。

私と彼女が別れたのは昼休みの終わる10分ぐらい前だから、明らかにおかしい。

(なぁーんだかあんまりよろしくない展開になりそうだよなぁ、)

彼女の無駄に丁寧に施されたテーピングを見つつ、私は授業中ずっとそんなことを考えていた。
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