![]() | 「小夜、こっちきんしゃい。」 腕をぐいっと引っ張られ後ろから抱きすくめられる。 「うわお。仁王、びっくりするじゃん。」 私の文句に耳も貸さず肩口にただただ顔を埋めている。だいたい無口になるときは何かあった時だ。 「どうしたの?」 「……………。」 こうなった仁王は面倒くさい。普通にあたるとなかなかどころか、絶対口を割らない。 「、まさ、雅治、私ちゃんといるよ?」 腰に回された手に優しく手を重ね、言い聞かすように囁く。 「………。」 「わっ?!」 急に肩が軽くなったと思うと、今度は体を反転させられ向き合う形になった。 「……………、最近、いろんな奴らと関わりすぎ、じゃ。」 「え?」 「…………まぁ、一万歩譲って関わるのはええ。じゃけど……」 「じゃけど?」 「…、俺にも構え。」 いつもの変な方言から標準語に変わり拗ねたような声をだす。 「ふふ、ごめんね。私もいろいろあったの。」 「………………。」 ささやかな言い訳をしてみると、見事に無言で一刀両断された。まぁ仁王は何故だか分かんないけど依存症なところがあるし、ここで機嫌をこれ以上損ねてしまうと大変だ、主に私が。 「じゃあ今度遊びに行こうか。2人だけで1日過ごそ!それで許してくれない?」 「…しょうがないのぅ。それで許しちゃる。」 声のトーンが沈んだものからワントーン上がる。ペテン師だなんだと言われながら私にとっては意外と仁王は分かりやすい人間だったりする。良かった、とりあえず最悪の事態は回避だ。 「ほんまはもうちょっとこうしとりたいけど、部活いってくるけぇ。約束忘れたあかんよ。」 ちゅっと私の頬にキスを落とし仁王は去って行った。 (何だか彼氏みたいだなぁ。) なんて思いながらも、全く赤くならない顔に仁王のスキンシップに慣れた自分を実感しつつ、私はいろいろと考える。 (でも確かにそう言われれば接触が多い気がするなぁ…。私もしかしなくても花井さんに目つけられたかな?) まずい事になったなぁなんて内心呟きながらもこれでさらに面白くなるかもしれないな、なんて考える自分になんだか呆れてしまう。 まぁいざとなれば逃げ道なんていくらでもあるし、今はまだ花井さんのシナリオに参加してあげるのもいいかもしれない。 とりあえず、面白ければそれでいい。私はそういう思考が中心なのだ。 ――――――――― title by彼女の心臓を食った悪魔 back::next |