青の従犯
でも、それでも、私は「ここ」を諦めるわけにはいかない。――…約束、したから。



目を開けると私は限りないブルーにたゆたっていた。

「…ここは、?」

なぜか現実味がなくて、まるで夢の世界のようでずっとここに居たいような、早く覚醒したいようなそんな感覚が身体中を支配していた。


「こんにちは。」

そんなふうにふわふわしていると声が聞こえた。声の方に目を向けると女の人がいた。産まれてこのかた日の光とは無縁のような白い肌をもつ女性。

―あぁ、きっと女神ってこの人みたいな姿してるんだ…

何故か分からないけどぼんやりとけれど、確信を持ってそう思った。

「こんにちは、美羽ちゃん。」

にっこりと名前を呼ばれ、微笑みかけられただけでなんだか全てがどうでもよくなる。全てが溶かされる。

「、こんにちは、」

「ふふ、はじめまして、かしら?
私は××っていうの。別に覚えてくれなくてもいいけれど、礼儀として名乗るわ。」

××。それが彼女の名前。固有名詞、呼び名、彼女を表す記号。

「だって私は貴女の名を知っているのに、貴女は知らないなんてフェアじゃないでしょう?」

そうだ、何で彼女は私の名前を知っているのだろう。何で私はこんな所に居るのだろう。何で私はこの人の前に居るのだろう。

先ほどまでふわふわとしていた思考が徐々にクリアになっていく。

「××、さん、何で私は…。」

私の問いかけに彼女は全て分かってると言わんばかりににっこりと笑い、その熟れた林檎のような唇を蠱惑的に動かした。

「私がね、貴女に惹き寄せられたの。」

「わたし、に?」

「そう、貴女のその強い願望に私は惹かれた。」

わたしの、がんぼう。
そんなのたった1つしかない。なんねんもわたしのなかにある、このねがい。

「そう、その狂おしいまでに真っ直ぐな決してぶれない爛れた願望に。」

彼女はただただ口元に優しい笑みをたたえている。けれど、何故だろう、どうしてか私の頭の中にある言葉が蘇る。

――笑顔は威嚇行動が進化したものなんだよ。

「私はならね?」

そんな私の思考を知ってか知らずか彼女は柔らかい声でまるで歌うように言葉の続きをを紡いだ。

「私なら貴女のそれを叶えてあげられる。」

その、まるで甘い毒のように私を蝕むその、言葉を。


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title by告別
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