濃くなる劣情
「美羽!その怪我どうしたんだよぃ?」

足を少し引きずりながら歩く少女に少年が話かける。

「うん、ちょっとぶつかっちゃって…」

えへへ、とどこか弱々しく笑う少女に少年の庇護欲が働く。

「…もしかしてファンクラブの奴らにやられたのか?」

「っちがうよ!ちょっと私がよそ見しててぶつかっちゃっただけだから!じゃっじゃあ私用事あるから先行くね!」

少し足を気にしながら少女は早足でその場を離れた。少女は否定したものの、あの焦りようを見れば肯定以外のなにものでもないと思わせるには十分だった。



「ねぇ、授業出なくてもいいの?」

「いいんすよ!どうせ出ても寝るし!」

屋上で授業をサボってのんびりしていると赤也が入ってきた。

「学生の本分は勉強なんだよ?サボるなんて感心しないなぁ。」

まぁ本音を言うとまったりTIMEを邪魔されたくないだけなんだけど。

「うっ…。で、でもそれ言うなら先輩もじゃないですか!」

そうきたか。だが少年、君はまだまだ甘いね。

「ん。」

私はポケットから細長い紙を取りだし、手渡した。

「?これってこの前の中間の結果っすか?」

「そ、開けてごらん。」

「……………よ、よんひゃくきゅうじゅうろくてん…?!」

恐る恐る開いた赤也の顔が驚愕に染まる。中間は500点満点だ。つまり私は4点しか落としていない。

どこ間違えたんだとか聞かないで。この年になってスペルbとd書き間違えたからとか恥ずかしくて軽く死ねるから。

「その結果から言うと私は本分を疎かにしていない。つまりサボってもおーるおっけー。おわかり?」

某海賊映画の主人公のように少しおどけて言ってみる。

「………。」

あれ、もしかしてはずした?…うわすっごいはずかs「っ先輩!いや師匠!俺に英語を教えてください!!」

「………は?」

「俺、今度の期末で赤点とったら地獄の練習メニューさせられるんです!!他の教科はまぁ大丈夫だけど、英語だけは………!」

赤也の異様な必死ぐあいから見ると、よっぽど地獄の練習メニューはキツいらしい。まぁ地獄ってついてるし当たり前っちゃあ当たり前か。でもうん。必死過ぎてちょっとひいた。だって顔がなんだかヤバい。どれぐらいかっていうと誰にも見せらんないぐらい。ごめん、かなりひいた。

「だからどうか俺に英語を!!お願いします先輩!いや神様!」

私がひいているのに気がつかないのか私にすがり付いてきた。なんかもう哀れに見えてきた。

「私でいいなら教えてあげるから、その顔で迫んないで!」

怖いし気持ち悪いから、いやまじで。

「っしゃあああああ!!」

ねぇ少年、今授業中だって気づいてる?
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